セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F4-11:

診断に難渋したが最終的に肝生検で経過を追えた薬剤性胆管消失症候群の1例

演者 坂本 愛沙(大阪大学附属病院)
共同演者 宮崎 昌典(大阪大学附属病院), 伊藤 麻里(大阪大学附属病院), 江崎 久男(大阪大学附属病院), 薬師神 崇行(大阪大学附属病院), 川井 翔一朗(大阪大学附属病院), 井上 隆弘(大阪大学附属病院), 山田 拓哉(大阪大学附属病院), 小瀬 嗣子(大阪大学附属病院), 新崎 信一郎(大阪大学附属病院), 西田 勉(大阪大学附属病院), 巽 智秀(大阪大学附属病院), 平松 直樹(大阪大学附属病院), 考藤 達哉(大阪大学附属病院), 辻井 正彦(大阪大学附属病院), 竹原 徹郎(大阪大学附属病院)
抄録 【症例】70歳代男性【現病歴】平成23年7月咳嗽を認め、近医でクラリスロマイシン等処方を受けた。翌月初め全身に痒疹が出現し、強力ネオミノファーフゲンC、グルタチオン等で経過観察されたが、1週間後の血液検査でT-bil 15.7mg/dlと黄疸を認め当院紹介され、入院となった。【入院後経過】第1病日38度を超える発熱を認め、血液検査でWBC 9,360/μl, CRP 0.93mg/dl, AST 68 U/ L, ALT 53 U/L, γGTP 241 U/L,ALP 719 U/L, T-bil 18.2 mg/dl, D-bil 12.7mg/dlと胆道系酵素優位の肝障害および軽度の炎症反応を認めた。腹部US,CTで肝内胆管拡張は認めなかったが、臨床所見と採血所見から急性胆管炎を疑い、抗生剤の投与を開始した。しかし胆道系酵素の改善なく、第5病日ERCを施行した。胆嚢管及び胆嚢は造影されずMirizzi症候群も疑われたが、肝内胆管および総胆管の狭窄は認めなかった。その後、総ビリルビンは20台で遷延し、第20病日、肝生検を施行した。病理組織では小葉胆管の減少を認め、胆管消失症候群の可能性が考えられたが、門脈域と判別できる部位が少なく確定診断には至らなかった。第26病日より黄疸は徐々に改善傾向を認め、経過から薬剤性胆汁うっ滞型肝障害を疑い経過観察を継続した。第50病日、再度肝生検を行ったところ、小葉間胆管の減少とともに微小な不整胆管が散見され、胆管消失症候群の回復過程の組織像と考えられた。その後も黄疸は緩徐に改善し、第71病日軽快退院となった。退院後3ヶ月で血液検査は正常範囲に復した。この時点で再度肝生検を行ったところ、内腔形成の見られる小葉間胆管が散見され、胆管再生が確認された。いずれの肝生検もPBCやPSCを示唆する病理組織像は認めず、薬剤起因性の胆管消失症候群の経過として矛盾しないと考えられた。【考察】原因不明の遷延する黄疸に対して肝生検を施行し、経時的に胆管消失から胆管再生過程を観察できた胆管消失症候群を経験した。投与された薬剤の中で、クラリスロマイシンに起因する胆管消失症候群が過去に報告例があり、本例においても原因薬剤である可能性がある。
索引用語 薬剤性肝障害, 黄疸