セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F4-3:

インターフェロン治療歴がありHBs抗原は陰性化していたが, 門脈本幹に腫瘍栓を伴う肝細胞癌を発症した一例

演者 前田 遼太朗(京都府立医科大学 卒後臨床研修センター)
共同演者 岡田 頼久(京都府立医科大学 消化器内科学), 角田 圭雄(京都府立医科大学 消化器内科学), 西村 健(京都府立医科大学 消化器内科学), 山口 寛二(京都府立医科大学 消化器内科学), 光吉 博則(京都府立医科大学 消化器内科学), 岩井 眞樹(京都府立医科大学 消化器内科学), 安居 幸一郎(京都府立医科大学 消化器内科学), 南 祐仁(京都府立医科大学 消化器内科学), 伊藤 義人(京都府立医科大学 消化器内科学)
抄録 50歳,女性.1988年にB型慢性肝炎に対しインターフェロン(IFN) 療法を受け, HBs抗原が陰性化していたために,医療機関への通院を自己中断していた. 2012年9月に上腹部圧迫感を訴え, 近医で肝機能異常を認め当院へ紹介された.飲酒歴は機会飲酒程度, 身長153cm,体重50 kg,AST 59 IU/l, ALT 36 IU/l, T-Bil 1.9 mg/dl, Alb 4.3 g/dl, Plt 10.1 万/μl, PT 97%, AFP 14.6 ng/ml, PIVKA-II 764 mAU/ml, HBs抗原 (-), HBs抗体 (+), HBc抗体 (+), HBe抗体(+), HBV DNA定量 検出感度未満, HCV抗体 (-). 肝Gd-EOB-DTPA造影MRIでは肝右葉後区域を中心に径8cmの辺縁不整な腫瘤を認め,早期相で不均一に濃染され,平衡相および肝細胞相で肝実質より低信号を呈した.また, 門脈左右枝および本幹内に腫瘍栓 (PVTT) を認めた.PMTシンチおよび骨シンチを施行したが遠隔転移なく, 腫瘍生検では中分化型肝細胞癌であった. 以上の所見から肝細胞癌 (T4N0M0, stage IVA)と診断した.Child-Pugh score 5点と肝予備能良好であったが, PVTTによる門脈完全閉塞を合併するためにTACEの適応外と考え,同年10月よりシスプラチンによる肝動注化学療法を開始し,PVTTに対して放射線照射(50Gy/25fr)を併用した.肝動注化学療法施行10日後にPlt 4.3万/μlと血小板減少(CTCAE Grade3)を認めたが,現在も治療継続中である. 結語: HBs抗原陰性化後に発症した肝細胞癌に対し,シスプラチンによる肝動注化学療法とPVTTへの放射線療法を施行した一例を経験した.HBs抗原陰性化後も肝細胞癌発症の可能性があり,定期的なフォローアップが必要と考える.
索引用語 肝細胞癌, B型肝炎