セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F3-8:

術前に診断し得た子宮広間膜異常裂孔ヘルニアによるイレウスの一例

演者 迫 智之(公立山城病院 消化器科)
共同演者 坂上 共樹(公立山城病院 消化器科), 石破 博(公立山城病院 消化器科), 川端 利博(公立山城病院 消化器科), 黒田 雅昭(公立山城病院 消化器科), 今井 昭人(公立山城病院 消化器科), 新井 正弘(公立山城病院 消化器科), 佐野 優子(公立山城病院 放射線科), 氏家 和人(公立山城病院 外科)
抄録 【症例】52 歳、女性【主訴】心窩部痛【現病歴】2012 /8/14、食直後の16 時頃より突然強い心窩部痛が出現し、持続。数回の嘔吐も認めたので、19時頃救急搬送された。【既往歴】なし【家族歴】特記事項なし【嗜好歴】なし【薬剤アレルギー歴】なし 【定期内服薬】なし【身体所見】体温 36 . 3℃、血圧 188 / 86mmHg 、脈拍 76 / min 、Sp02 100 %(room air)、JCS I-1 、腹部:平坦・軟、心窩部に圧痛あり。【検査所見】血液検査; WBC9240 /μl、 LDH212 IU/l、血小板 42.8 万/μl、CRP正常。食直後の症状であり急性胃炎等が疑われた。鎮痛剤で痛みは多少軽減したが持続するため入院となった。【入院後経過】翌朝になっても心窩部痛が持続するため、腹部超音波検査を施行したところ、広範囲に拡張した小腸を認めたのでイレウスと診断し、引き続き腹部造影 CT検査を施行した。子宮左側にある小腸が閉塞起点となりclosed loopを形成していた。loopは子宮円索と思しき構造物より下方、背側に脱出しており、浮腫性の壁肥厚と腸間膜の濃度上昇があることから、子宮広間膜異常裂孔へルニアによる絞扼性イレウスが考えられイレウス管挿入の上、外科紹介し転科となった。すぐに腹腔鏡下イレウス解除術が施行された。回腸末端から 130cm 口側の回腸に 4×3cm 大の腹膜垂を認め、そこから 肛門側へ 60cm にわたる回腸が嵌頓していた。嵌頓小腸を口側・肛門側から牽引して嵌頓を解除した。原因となった腹膜垂を切除し、修復した。解除された腸管には明らかな血流障害は認めず、腸管切除は不要と判断した。また、子宮広間膜及び卵巣固有靭帯を切離して開放して終了した。【術後経過】経過良好であり術後4日目より食事開始、5日目にイレウス管抜去し、12日目に退院となる。【結語】本疾患は術前に診断されることは稀であると報告されているが、幸いにも本症例では、術前に子宮広間膜異常裂孔へルニアによるイレウスと診断でき、腸管切除を回避できた。中高年の女性で手術歴のないイレウスでは本疾患も念頭に置くべきである。
索引用語 ヘルニア, イレウス