セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F3-9:

CARTが自覚症状改善に有効であった漿液性表在性乳頭状腺癌の一例

演者 田中 誠治(公立山城病院 消化器科)
共同演者 新井 正弘(公立山城病院 消化器科), 石破 博(公立山城病院 消化器科), 川端 利博(公立山城病院 消化器科), 坂上 共樹(公立山城病院 消化器科), 黒田 雅昭(公立山城病院 消化器科), 今井 昭人(公立山城病院 消化器科), 前田 和則(公立山城病院 産婦人科)
抄録 【症例】63歳女性【主訴】腹部膨満感【現病歴】2010年5月から体重増加、9月から腹部膨満感を自覚していた。9月29日他院受診し腹水の貯留を認め、腹水細胞診で腺癌と診断された。上部消化管内視鏡検査、腹部CT、FDG-PET検査を施行するも原発巣は不明であった。本人の希望により精査継続、加療目的で10月19日当院転院となった。【既往歴】特記事項なし【身体所見】腹部:膨隆軟、圧痛なし【経過】入院後の腹部CTで著明な腹水貯留が見られ、左右両側付属器表面に結節があり、骨盤内の腹膜が著明に肥厚、結節も見られた。その他大網をはじめ腹腔内に播種結節が散在し、傍大動脈リンパ節も腫大しており癌性腹膜炎の所見であった。腹腔穿刺での腹水は浸出性で腺癌と診断され、自覚症状改善目的に10月21日にCART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:腹水濾過濃縮再静注法)を施行した。淡黄色腹水を4400mlドレナージし、うち2800mlを1000mlに濃縮して点滴静注したところ、腹部膨満感は消失、食事は全量摂取できるようになった。その後徐々に全身状態も改善したので当院産婦人科を受診し、漿液性表在性乳頭状腺癌(Serous Surface Papillary Carcinoma、以下SSPCと略)と診断された。卵巣癌に準じた減量手術および化学療法を希望されたので11月2日に両側付属器切除および大網転移組織部分切除、5クールDC療法を行った。全身状態良好であったが腹部CTで大動脈リンパ節が腫大していたため、大網切除および残存腫瘍切除目的で翌年4月1日にSecond look operationを行ったところ、大網に転移した腫瘍塊も認めず一部切除のみ行った。その後腫瘍マーカーおよび腹部CTで外来フォローを継続しているが、現在まで再発徴候はみられない。【結語】SSPCは治療を行っても延命程度で治癒は難しいが、CARTを実施したところ自覚症状が改善し手術後2年間再発を生じていないSSPCの一例を経験したので若干の考察を加えて報告する。
索引用語 CART, SSPC