セッション情報 一般演題

タイトル 14:

進行胃癌との鑑別に苦慮した好酸球性胃腸炎の1症例

演者 西川 倫子(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科)
共同演者 大井 充(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科), 寺島 禎彦(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科), 小畑 大輔(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科), 吉江 智郎(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科), 塩見 英之(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科), 増田 充弘(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科), 吉田 優(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科), 藤田 剛(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科), 東 健(神戸大学 医学部 付属病院 消化器内科)
抄録 症例は50歳代、男性。2011年7月より両下腿浮腫および腹部膨満感を自覚し近医を受診し精査を受けるも確定診断を得られず、同年8月当科紹介受診となった。上部消化管内視鏡では体中部から前庭部にかけて全周性で周囲にヒダの腫大を伴う発赤陥凹病変を認めた。腹部CTでは胃の浮腫状の壁肥厚に加え胃小弯側や腸間膜上の多数のリンパ節腫大、小腸の広範な壁肥厚、腹水貯留も伴っていたことより4型進行胃癌、多発リンパ節転移、腹膜播種が強く疑われた。FDG-PETでも胃へのFDG集積亢進が著明であった。しかし胃粘膜の多点生検やEUS-FNAによる胃周囲リンパ節生検では悪性所見を認めなかった。一方で入院時TP 3.5g/dl, Alb 1.7g/dlと著明な低蛋白血症を認めていたことより蛋白漏出性胃腸症も考え精査していたが、蛋白漏出シンチを施行したところ胃ではなく大腸に集積を認めた。入院後徐々に末梢血にて好酸球数の上昇を認めていたため(13%)、好酸球性胃腸炎の可能性も考え下部内視鏡検査を再検したところ、内視鏡上粘膜面には大きな変化を認めなかったが、回腸末端から直腸すべての生検標本において好酸球の浸潤を認めた。以上の結果より好酸球性胃腸炎と診断しプレドニゾロンの経口投与(40mg/day)を開始したところ症状や低蛋白血症は著明に改善し、内視鏡・CT上胃病変も改善傾向を認めた。プレドニゾロン漸減、中止後も再燃なく経過している。本症例は、進行胃癌を強く示唆する画像所見にもかかわらず組織検査にて確定診断に至らず、肉眼的に病変を認めなかった大腸に蛋白漏出と好酸球の浸潤を認め好酸球性胃腸炎の診断に至った興味深い症例であり若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 蛋白漏出性胃腸症, スキルス胃癌