セッション情報 ワークショップ1「膵疾患診療の最近の進歩」

タイトル W1-11:

急性膵炎合併症に対する経乳頭的膵管ドレナージの可能性

演者 松村 和宜(滋賀県立成人病センター 消化器内科)
共同演者 上田 康祐(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 國立 裕之(京都桂病院 消化器内科)
抄録 【目的】急性膵炎後合併症(Smoldering pancreatitis, Pancreatic ductal disruptions, Evolving pancreatic necrosis.)に対するERCPの有用性が報告され、急性膵炎合併症による治療の進歩が期待されたが、ERCP後膵炎の偶発症を危惧し膵への内視鏡治療を躊躇されることが多いとされる。(Varadarajulu Gastrointest Endosc. 2003)Walled-off pancreatic necrosisに対するEUSを用いた内視鏡治療は目覚しい進歩を遂げているが、前段階の合併症が起こりつつある時期の経乳頭的膵管ドレナージの有用性の検討は多くない。今回、我々は急性膵炎症合併症に対する経乳頭的膵管ドレナージ8例の検討を行なった。また急性膵炎症例に対するERCP後膵炎のリスクについても検討し報告する。【方法】Walled-off pancreatic necrosisを認める前段階の急性膵炎合併症8症例にERCPによる経乳頭的膵管ドレナージを施行し有用性を検討した。また、我々が経験した急性膵炎301症例の内、ERCPを施行した86例(軽症77例、重症9例)について急性膵炎症例に対するERCPがERCP後膵炎の高リスクであるかを検討した。急性膵炎ERCP施行86症例のうち予防的膵管ステンは10例、ENPD8例、計18例(20.9%)にERCP後膵管減圧を試みた。【成績】急性膵炎合併症8症例に膵管ドレナージを施行し3例に著効を認めた。非著効5症例においても膵炎等の偶発症を含め、症状増悪は認めなかった。急性膵炎ERCP施行86症例においてERCP後膵炎を1例(1.16 %)に認めた、対象1376例におけるERCP後膵炎は4.87%でありP=0.113と有意差は認めなかった。膵炎症例群24時間後AMY中央値は164IU/L(39-1666)、対象群24時間後AMY値は125 IU/L(10-3222)でありP=0.099と有意差を認めなかった。【結論】急性膵炎合併症に対して経乳頭的ドレナージによる膵管減圧は有用な治療法となる可能性があると思われた。また、急性膵炎症例に対するERCPにおけるERCP後膵炎の頻度は、通常ERCP症例と同等のリスクと考えられ、適応を検討し、ERCP後膵管ドレナージ等の工夫を加えることにより急性膵炎症例においてもERCP処置は許容される処置と思われた。
索引用語 急性膵炎, ERCP