セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル Y7-8:

術前化学療放射線法によりR0手術が可能となった局所進行膵頭体部癌の1例

演者 西村 潤也(大阪市立大学大学院 腫瘍外科)
共同演者 木村 健二郎(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 天野 良亮(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 村田 哲洋(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 平田 啓一郎(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 永原 央(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 豊川 貴弘(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 野田 英児(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 久保 尚士(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 田中 浩明(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 六車 一哉(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 大谷 博(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 大平 雅一(大阪市立大学大学院 腫瘍外科), 平川 弘聖(大阪市立大学大学院 腫瘍外科)
抄録 症例は64歳、男性。2010年2月に糖尿病の悪化を認めインスリン導入目的に入院となった。その時のCT・MRCPにて膵頭体部に16mm大の分枝型IPMNの指摘を受けるも悪性所見認めず経過観察となった。2011年8月にCA19-9の上昇認め、EUS・ダイナミックCTにて精査行ったところ、膵頭体部にIPMN由来浸潤癌(27mm大の嚢胞およびその周辺に18mm大の結節性病変)を認め、同年12月に根治切除目的で手術施行した。術中所見にて、総肝動脈から胃十二指腸動脈および固有肝動脈に及ぶ癌浸潤を認め切除不能と判断した。術後、化学放射線療法を行う方針とし、ジェムザール1000mg/mm2による化学療法および計50.4Gy放射線療法を行った。化学放射線療法後の評価はSDであり、ジェムザール・TS-1併用による化学療法(GS療法)を引き続き行う方針とした。GS療法4クール後の評価にて腫瘍の縮小が確認され、腫瘍マーカーの正常化が3か月維持できていたことも考慮し、再度根治切除を試みる方針とし、2012年10月に手術を施行した。前回の手術所見を考慮し、総肝動脈を根部で切除し、右肝動脈と左胃動脈を吻合する形での肝動脈再建を行った。また、門脈浸潤も疑われたため門脈合併切除も伴う膵頭十二指腸切除術を施行した。術後経過に大きな問題なく術後32日目に退院となった。病理診断の結果は、well differentiated tubular adenocarcinoma, ly0, v0, ne0, ch(-), du(-), rp(-), s(-), pv(-), a(-), pl(-), oo(-), pcm(-), bcm(-), dpm(-), stageIIであった。放射線化学療法後の評価であるEvans分類はGradeIIIであり、剥離面や動脈周囲に癌遺残を認めずR0手術が行えたと判断した。治癒切除後の膵癌に長期生存を期待するためには、R0手術を行うことが必須条件である。最近では、Borderline resectable膵癌に対し術前化学放射線療法の有用性、特にR0率の上昇が報告されている。本症例は、動脈浸潤を伴う局所進行膵癌に対して、化学放射線療法およびGS療法を加えることでR0手術が可能となり、示唆に富んだ症例と思われ、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵癌, 化学放射線療法