セッション情報 一般演題

タイトル 19:

腹腔鏡下腹膜生検にて診断しえた結核性腹膜炎の1例

演者 上田 渉(大阪市立十三市民病院)
共同演者 宮野 正人(大阪市立十三市民病院), 大庭 宏子(大阪市立十三市民病院), 青木 哲哉(大阪市立十三市民病院), 倉井 修(大阪市立十三市民病院), 大川 清孝(大阪市立十三市民病院), 新川 寛二(大阪市立十三市民病院外科), 高塚 聡(大阪市立十三市民病院外科)
抄録 【症例】70歳代 男性 【主訴】腹部膨満感 【既往歴】60年前に肺結核【現病歴】2012年3月から腹部膨満感を自覚し前医を受診した。腹部超音波検査、腹部CT検査では大量の腹水を認め、FDG-PET検査では、腹膜に異常集積を認めた。腹膜中皮腫、転移性腹膜炎、結核性腹膜炎が鑑別に挙げられた。しかし上部、下部消化器内視鏡検査では異常所見を認めず、腹水穿刺からの腹水検査、腹水培養検査でも確定診断に至らなかった。このため精査加療目的にて当院へ紹介入院となった。【経過】当院での腹部CT、超音波検査でも腹膜の肥厚と腹水を認めたが、腹水は減少していた。なお胸部X-P検査、胸部CT検査では、右肺尖部に陳旧性の炎症性変化を認めるのみで、活動性の肺病変は認めなかった。血液検査では血沈が71mm/時間と亢進し、CRPは0.68mg/dlと軽度上昇していたが、腫瘍マーカーは正常範囲であった。原因不明の腹水に対して、確定診断目的で腹腔鏡下腹膜生検を施行した。腹腔内は癒着が著明で、腹膜に白色微小結節がびまん性に多発していた。肥厚した腹膜を切開し、病理学的に検索した。腹膜組織に多数のLanghans型巨細胞を伴う肉芽腫を認め、一部は中心壊死を伴っていた。腹水中からは結核菌は認められなかったが、病理組織から結核性腹膜炎と診断し、抗結核療法にて腹水は消失した。【考察】結核性腹膜炎は、全結核患者の0.04-0.5%と稀な疾患である。結核性腹膜炎患者の腹水途抹での結核菌陽性率は3%、腹水の結核菌培養陽性率も低く診断に難渋する。更に画像診断でも悪性中皮腫や癌性腹膜炎との鑑別を要する。今回我々は、腹腔鏡下腹膜生検が診断に有用であった結核性腹膜炎患者の1例を経験したので、若干の文献学的考察を含めて報告する。
索引用語 結核性腹膜炎, 腹腔鏡