セッション情報 一般演題

タイトル 15:

胆管拡張を伴った好酸球性Vater乳頭炎の一例

演者 木下 幾晴(独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センタ― 消化器科)
共同演者 木下 真樹子(独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センタ― 消化器科), 岡 正巳(独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センター 外科), 中谷 佳弘(独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センター 外科), 玉置 卓也(独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センター 外科), 小澤 悟(独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センター 外科), 田端 宏尭(独立行政法人国立病院機構 南和歌山医療センター 外科)
抄録 症例は67歳男性.主訴は特になし.近医で肝胆道系酵素異常と胆管拡張を指摘され,精査目的に当院を紹介受診した.軽度の炎症反応上昇(CRP3.21mg/dl),肝胆道系酵素異常(AST97IU/l,ALT153IU/l,LDH286IU/l,ALP2825IU/l,γ-GTP798IU/l,T-Bil0.9mg/dl)に加え著明な末梢血好酸球増多(白血球9200/ml,好酸球57.1%)を認めた.造影CTにて下部胆管の狭窄が疑われ,ERCPを施行。乳頭部には特に異常所見なく,胆管造影では胆管拡張は認めるものの狭窄は認めなかった.ESTを施行し下部胆管の生検を行ったが,炎症細胞浸潤のみで異型性は見られなかった.1か月後には肝胆道系酵素は正常化し,画像上の胆管拡張も消失したが,好酸球は依然として10~30%と高値を示した.上下部内視鏡検査を施行し,生検にて正常粘膜と思われる胃前庭部,十二指腸球部,vater乳頭,終末回腸,盲腸~下行結腸に好酸球浸潤を伴う炎症を認めた.IgEは2889IU/mlと高値.検索範囲内で食物アレルギーは認めず,消化管寄生虫も認めなかった.本例は1.消化器症状があり,2.消化管の生検にて好酸球浸潤の証明と,末梢血での好酸球増多を認め,3.寄生虫疾患,消化管外病変を認めないため,Talleyらの好酸球性胃腸炎の診断基準を満たしている.EST後は肝胆道系酵素及び画像上の改善をみたため,ステロイドは使用せず経過を観察した.5か月後には好酸球は2.3%と正常域になったものの,1年後の乳頭部からの生検では好酸球浸潤が認められた.本例のvater乳頭は一見正常に見えたものの,好酸球浸潤の強い炎症が認められたことから,胆管拡張の原因として好酸球性の乳頭炎が原因となったと推察された.非常に稀な症例であり,文献的考察を加え報告する.
索引用語 好酸球性胃腸炎, 胆管拡張