抄録 |
【目的】肝癌診療マニュアルにおいてPEIT(経皮的エタノール注入療法)の位置づけは、「RFA(ラジオ波熱凝固療法)により置き換わられつつあるが、肝機能不良例や、腫瘍の局在が隣接臓器に近接したRFA困難例に限り適応がある」とされている。当院では、2004年のRFA導入以降、RFAの件数増加に伴いPEITの件数が減少しているが、肝癌診療マニュアルに沿った適応例に対しPEITを施行している。また、当院では展開針のみを用いてRFAを行っており、局在的な理由によりRFAに追加治療としてPEITを行うケースも多い。そこで我々は、RFAが普及している現況におけるPEITの位置づけを明らかにするために、2009年から2011年までに当院で施行された局所治療のうち、PEITが選択された症例について、その適応及び効果をRFA症例と比較して検討した。【方法】2009年1月から2011年12月までに当院にて施行された内科的局所治療例326例についてRFA症例とPEIT症例について、年齢、 Child-Pugh スコア、肝細胞癌の進行度、結節径、個数、局在、局所制御能を検討した。また、RFAに追加してPEITを行った症例に関してもその局所制御能をRFA単独群と比較して検討した。【成績】PEIT施行症例において、RFA施行症例と比較して年齢、腫瘍径に有意差を認めなかったが、Child-Pughスコア、肝細胞癌の進行度は有意に進行しており、肝予備能、肝細胞癌の進行度が悪い症例を選択してPEITを行っていた。また、局所再発率はRFAに比し高い傾向にあったが、有意差を認めなかった。腫瘍径が2cmを超えてPEITが選択されている症例は、主に局在的な理由によりPEITが選択されていた。RFAの追加治療としてPEITを行った症例の局所再発率は、RFA単独群と比較して高い傾向にあったが、有意差を認めなかった。【結論】PEITはRFAに比し局所制御能力に劣るものの、肝癌診療マニュアルに示されたように、肝機能不良例や局在的な理由によりRFAが難しい症例に対して有用であると考えられた。また、展開針のみでRFAを行っている施設においては、RFAの追加治療としても有用であると考えられた。 |