セッション情報 シンポジウム2「肝細胞癌に対する治療戦略」

タイトル S2-5:

当院における肝細胞癌の対する放射線治療の現状

演者 尾下 正秀(大阪警察病院 内科)
共同演者 宮竹 英希(大阪警察病院 内科), 岡本 欣晃(大阪警察病院 放射線治療科)
抄録 【目的】現在、放射線治療(以下、RT)は肝細胞癌の主たる治療法ではないが、肝細胞癌の主病巣、リンパ節(LN)・骨・脳などの転移巣、門脈・下大静脈などの血管内腫瘍栓に対してRTは行われている。RTの目的は腫瘍に対する治療というよりも、疼痛などに対する緩和を目的とした治療が主となることが多い。今回、当院における肝細胞癌の対するRTの現状について報告する。
【対象】2008年~12年にRTを施行した肝細胞癌患者54名(男/女=41/13、年齢51~85歳、成因:HBV/HCV/アルコール=8/36/10)。
【成績】(1)治療部位は、肝細胞癌の主病巣5名、肝細胞癌の主病巣+LN転移1名、骨転移15名、LN転移6名、骨+LN転移1名、骨およびLN節以外の転移3名、門脈腫瘍栓(PVTT)10名、下大静脈腫瘍栓(IVCTT)7名(1例中肝静脈を含む)、PVTT+IVCTT 3名、PVTT+LN転移1名、胆管腫瘍栓2名であった。(2)病変別のRT治療開始後の生存期間は、転移巣(骨、LNなど)にRTを行った25例では、314±388日(中央値210日、37~1711日、10名生存中)、PVTTにRTを行った10例では、272±205日(中央値154日、74~656日、3名生存中)、IVCTTにRTを行った7例では、574±297日(中央値662日、127~1101日、2名生存中)であった。(3)治療開始後2年を経過した(2010年までにRTを開始した)症例における1年/2年生存率は、転移巣(N=9)は33%/22%、PVTT(N=5)は40%/0%、IVCTT(N=6)は 83%/50%であった。
【まとめ】当院での肝細胞癌に対するRTに関し、上記の成績を得た。その多くが進行肝細胞癌に対し行われた。RT後の生存期間の中央値からみると、転移巣例(約7カ月)、PVTT例(約5カ月)に比し、IVCTT(約22カ月)例で良好な成績であった。治療例の中で、RTにて照射部位を制御でき、他の治療(TACE、sorafenib投与など)を行い、長期生存をえられた例もあり、今後、症例を積み重ね、RTの肝細胞癌に対する位置づけを考えていく必要がある。
索引用語 肝細胞癌, 放射線治療