セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F3-7:

上腸間膜動脈閉塞症に対して、血栓溶解療法が有効であった1例

演者 有里 哲哉(八尾市立病院 消化器内科)
共同演者 末村 茂樹(八尾市立病院 消化器内科), 三好 晃平(八尾市立病院 消化器内科), 氣賀澤 斉史(八尾市立病院 消化器内科), 巽 理(八尾市立病院 消化器内科), 上田 高志(八尾市立病院 消化器内科), 寺部 文隆(八尾市立病院 消化器内科), 福井 弘幸(八尾市立病院 消化器内科), 吉田 重幸(八尾市立病院 放射線科)
抄録 【症例】63歳、男性【主訴】腹痛【既往歴】胃潰瘍、脂質異常症【経過】会社に出勤したところ突然臍周囲の急激な痛みを自覚し、当院救急搬送となった。搬送時は自発痛が強く、冷汗も著明であったが、筋性防御や反跳痛はなく、圧痛も軽度であった。腹部単純CTで腹部大動脈の限局性拡張があり、腹部造影CTを施行したところ、上腸間膜動脈遠位での閉塞を認め、上腸間膜動脈閉塞症と診断した。画像および血液検査結果よりは明らかな腸管壊死所見は認めず、発症約4時間後から緊急血栓溶解療法を開始した。上腸間膜動脈造影で回結腸動脈分岐部より遠位での上腸間膜動脈の完全閉塞を認め、ウロキナーゼ48万単位動注と血栓吸引を行った。閉塞部位は再開通し、辺縁動脈よりの供血も良好と考えられたが、近位部や分枝にわずかに血栓の残存を認めたため、引き続きウロキナーゼ24万単位/日の持続動注を行うとともに、ヘパリンの投与も開始した。腹痛も著明な改善を認めた。翌日には自覚症状はなく、上腸間膜動脈のアンギオCTで還流の不良な部位はなく、腸管壊死を疑う所見も認めなかった。引き続いて行った上腸間膜動脈造影で残存血栓の消失を確認したため、ウロキナーゼ動注は終了とした。心房細動はなく、動脈硬化が原因と考えられた。そのため、抗血小板薬の投与が望ましいと考え、アスピリン腸溶錠内服を開始とした。その後の経過は良好であり、第9病日に退院となった。【結語】上腸間膜動脈閉塞症は死亡率が現在でも高率であり、早期診断・治療が非常に重要である。心房細動や動脈硬化の危険因子をもつ急性腹症患者においては、本疾患も疑い、早期に腹部造影CTを行う必要がある。今回我々は早期に診断でき、血栓溶解療法が有効であった1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 上腸間膜動脈閉塞症, 血栓溶解療法