セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F3-4:

腹部超音波検査(US)にて指摘し、造影CTとの対比にて診断した下行結腸腹膜垂炎の一例

演者 岩本 剛幸(市立池田病院 消化器内科)
共同演者 福田 和人(市立池田病院 消化器内科), 関 康(市立池田病院 放射線科), 小来田 幸世(市立池田病院 消化器内科), 澤井 良之(市立池田病院 消化器内科), 中原 征則(市立池田病院 消化器内科), 松本 康史(市立池田病院 消化器内科), 厨子 慎一郎(市立池田病院 消化器内科), 井倉 技(市立池田病院 消化器内科), 今井 康陽(市立池田病院 消化器内科)
抄録 【背景】原発性腹膜垂炎は予後良好な疾患で特徴的な画像所見から診断が可能であるが、虫垂炎や憩室炎と診断され外科手術を含めた過剰な治療が行われることも少なくない。本疾患を正確に診断し適切な加療を行うことは重要と考えられる。【症例】42歳男性【主訴】左側腹部痛【既往歴】脂肪肝【現病歴】受診前日朝から左下腹部痛が出現。歩行時や仰臥位・前屈位で疼痛が増強しその後も軽快しないために翌日当院外来受診。受診時、発熱・便通異常なく嘔気、食欲不振も認めなかった。診察上、左下腹部に明瞭な圧痛点を認め、反跳痛も軽度認めた。血液検査ではCRP 0.4mg/dlと軽度炎症反応の上昇を認めたが、WBC 4840/μLで正常範囲であった。USでは左下腹部の圧痛部に一致して下行結腸の前壁の脂肪織内にφ17.1×20.1×8.5mm大の比較的境界明瞭なリング状低エコー帯を有する卵円形のhigh echo areaを認めた。またリング状低エコー帯は腹壁直下の脂肪層と周囲脂肪層の境界を走行する線状低エコーと連続していた。結腸壁の肥厚は認めず周囲に憩室の存在を疑う所見も認めなかった。カラードップラー法では腫瘤及び周囲脂肪織に血流シグナルは描出されなかった。造影CTでは下行結腸の前壁側に卵円形の低吸収腫瘤を認め、連続する腹膜に軽度の肥厚を認めた。USとCTの対比では、CTで認められる腫瘤はCT値が-17と脂肪のdencityであり脂肪塊であることが判明した。また腫瘤周囲のリング状低エコーと連続した線状低エコー帯はCTにて高吸収域として描出され軽度肥厚した腹膜であった。以上の検査結果より腹膜垂炎と診断した。抗生剤による保存的治療を開始し、4日後には炎症反応の改善、7日後には症状の消失を認めた。【考察】腹膜垂炎は比較的稀な疾患と考えられてきたが、近年の画像診断技術の進歩により報告例は増加している。臨床的に保存的に加療されて軽快した腹痛患者にも相当数含まれていると考えられる。今回我々は腹部超音波にて指摘し、造影CTとの対比を行うことが出来た下行結腸腹膜垂炎の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。
索引用語 腹膜垂炎, 腹部超音波検査