セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y7-05:

膵周囲後腹膜出血にて発症した腹腔動脈分枝多発動脈瘤の一例

演者 向 あかね(滋賀県立成人病センター 消化器内科)
共同演者 太田 麻由(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 森田 敏弘(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 上田 康佑(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 真下 陽子(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 貴田 雅也(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 山本 修司(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 石原 真紀(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 藤本 昌澄(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 水田 和彦(滋賀県立成人病センター 消化器内科), 松村 和宜(滋賀県立成人病センター 消化器内科)
抄録 【症例】40代、男性。【既往歴・家族歴】特記事項無し【現病歴】急激に出現した心窩部痛と左腰背部痛を主訴に近医へ救急搬送された。左上腹部に強い圧痛を認めたが、血液検査では、軽度の炎症反応高値を認めた他は特記すべき異常所見なく、膵酵素上昇も認めなかった。腹部Dynamic CTでは、腹腔動脈・脾動脈に血栓形成を認めたが、腹腔内臓器と脾臓への血流は保たれていた。膵周囲から腎下極以遠まで、滲出液の貯留と脂肪織濃度上昇を認め、重症急性膵炎が疑われ当院転院となった。膵酵素上昇や炎症反応上昇を認めず、急性膵炎としては非典型的と思われたが、補液、膵酵素阻害剤、ヘパリン投与にて加療した。急性膵炎の原因検索として施行した第2病日のMRCPでは、膵管、胆管に明らかな異常は認めなかった。第6病日にフォローのDynamic CTを施行したところ、膵周囲の液体貯留は改善し、腹腔動脈、脾動脈血栓は消失していたが、腹腔動脈、脾動脈、総肝動脈に動脈瘤の形成と血管壁の不整を認めた。脾動脈背側に血腫を疑う低濃度域を認め、脾動脈瘤破裂による膵周囲後腹膜出血と診断した。多発する腹部内臓動脈瘤の成因として、結節性多発動脈炎などの血管炎、感染、先天性疾患なども考慮されたが、特徴的な身体所見なく、検査所見からも否定的であり、動脈壁の不整という特徴的な画像所見からsegmentary arterial mediolysisを疑った。IVR治療の適応について検討したが、SAMであれば自然消褪する可能性が考えられる事、破裂動脈瘤は自然止血が得られていた事、治療による短期的・長期的合併症を考慮し、保存的加療を行う事とした。血圧管理と、腹部CT、USによる頻回のフォローを行い慎重に経過観察を行い、第24病日に施行したCTAでは動脈瘤の自然縮小を認め、退院とした。動脈瘤再発の可能性を念頭に置き、現在外来にて慎重にフォロー中であるが、現在まで再発の所見は認めていない。腹腔内多発動脈瘤を来した膵周囲後腹膜出血の一例を経験したので、文献的考察を踏まえ報告する。
索引用語 多発内臓動脈瘤, segmentary arterial mediolysis