セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y6-3:

肝膿瘍との鑑別を要した神経内分泌細胞癌の1例

演者 小田桐 直志(大阪市立総合医療センター 肝臓内科)
共同演者 中井 隆志(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 川崎 靖子(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 木岡 清英(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 山村 匡史(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 若原 佑平(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 平松 慎介(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 末包 剛久(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 山崎 智朗(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐野 弘治(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐々木 英二(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 根引 浩子(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐藤 博之(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 河田 則文(大阪市立大学 肝胆膵病態内科学)
抄録 症例は75歳男性。既往歴として非ホジキンリンパ腫、脳梗塞、不安定狭心症、間質性肺炎がある。平成24年11月より発熱・軽度の右季肋部痛を自覚し、当院を受診した。来院時37.8℃の発熱と肝叩打痛を認め、血液検査では軽度の炎症反応高値と肝胆道系酵素上昇を認めた。腹部単純CTでは約6ヶ月前には存在しなかった粗大で多房性の低濃度腫瘤を肝内に2個認め、造影したところ辺縁に造影効果を有しており、臨床症状と併せて肝膿瘍の診断でSBT/ABPC 3g ×4回/日の投与を開始した。抗生剤投与後は高熱の出現はなく、炎症反応は軽度高値で推移した。血液培養は陰性で、血清アメーバ抗体価も陰性であった。治療開始後15日目にフォローのCTを施行したところ、肝腫瘤はサイズの増大を認めた。また腫瘍マーカーもCA19-9 99.5 U/ml、CEA 19.1 ng/ml、PIVKA-II 43 mAU/mlであり、肝膿瘍ではなく、転移を含めた肝悪性腫瘍である可能性を疑った。12月13日に腫瘍内液体貯留部からの吸引細胞診および腫瘤辺縁の生検を施行した。穿刺液は血性で細胞診はclass Vの結果であり、生検では腫大した核を持つ異型細胞が充実性に増生している所見であった。免疫染色を追加したところCK-AE1/3(+)、CD56(+)、L26(-)、CD3(-)との結果であり、神経内分泌細胞癌の診断に至った。転移性を疑ったが、上下部内視鏡検査・造影CT・頭部MRIなどを追加しても原発巣は特定できず、肝原発であった可能性も否定できなかった。治療について肝胆膵外科・臨床腫瘍科にコンサルトするも、間質性肺炎の存在やADLの低下などから手術治療・化学療法の適応外と判断され、今後は緩和医療の方針となった。神経内分泌細胞腫瘍は膵内分泌腫瘍、消化管カルチノイド、肺を代表とする小細胞癌の頻度が高いとされ、肝病変はその殆どが転移であり、肝原発はごく稀であるとされる。今回我々は肝膿瘍との鑑別を要し、肝生検で神経内分泌癌と診断し得た症例を経験した。原発巣の特定には至らなかったが、稀な神経内分泌細胞癌について若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 神経内分泌細胞癌, 肝膿瘍