セッション情報 一般演題

タイトル 17:

慢性特発性大腸偽性腸閉塞症によりS状結腸軸捻転症をきたした一例

演者 竹内 庸浩(川崎病院 消化器内科)
共同演者 田中 さゆり(川崎病院 消化器内科), 青木 領太(川崎病院 消化器内科), 西田 悠(川崎病院 消化器内科), 野村 祐介(川崎病院 消化器内科), 前田 哲男(川崎病院 消化器内科), 多田 秀敏(川崎病院 消化器内科), 仙波 秀峰(神戸大学大学院病理学分野病理学講座)
抄録 【症例】39歳女性.【主訴】下腹部痛、嘔吐【既往歴】原因不明の腸閉塞の既往がある.【現病歴】2011年8月中旬,激しい下腹部痛が出現し,嘔吐を伴ったため当院救急搬送後に入院となる.【現症】身長 162cm,体重 60kg,BMI 22.9kg/m2.バイタルサインに異常なく,腹部は著明に膨隆し,腸雑音は低下していた.【経過】腹部CTで,S状結腸間膜に捻転を示唆するwhirl signを認めた.大腸内視鏡検査を施行し,スコープを120cm挿入したところで,捻転の所見を認めた.スコープの長さが足りず深部挿入は不可能であったため,手術にて捻転を整復する方針とした.手術所見で,拡張したS状結腸は180℃半時計方向に回転し捻転していた.S状結腸は充血していたが壊死には至らなかった.捻転整復後にS状結腸を部分切除し,機能的端々吻合を施行した.切除したS状結腸を,病理組織学的に検討したところ,腸管拡張部位で固有筋層が菲薄化し,筋層内神経叢での神経節細胞の減少が認められた.神経叢での神経節細胞はagangliosisではなくhypogangliosisであった.S-100で神経由来の細胞を標識して検討したところ,神経線維が細くなり断裂しており,神経線維束の構造の変化が明らかとなった.これらの所見より本例はCICPと考えられた.術後4日目より経口摂取を開始し,便秘傾向が続いたため下剤にて排便コントロールを行い,術後21日目軽快退院した.以後,外来フォローするも現在のところ経過は良好である.【まとめ】慢性特発性偽性腸閉塞症(CICP)は,慢性の腸閉塞症状を呈するものの器質的な腸閉塞は存在しない疾患であると定義されている.欧米ではまれではないが,本邦では報告が少ない.病理組織学的には,神経節細胞の萎縮・変性を認める.CICPによりS状結腸軸捻転症をきたした一例を経験したので報告する.
索引用語 慢性特発性大腸偽性腸閉塞症, S状結腸軸捻転症