セッション情報 一般演題

タイトル 48:

Tocilizumabが著効した続発性消化管アミロイドーシスの1例

演者 鋳谷 成弘(馬場記念病院 消化器科DELIMITER大阪市立大学消化器内科学)
共同演者 池田 大輔(馬場記念病院 消化器科), 新井 貴久(馬場記念病院 消化器科), 平田 直人(馬場記念病院 消化器科), 真下 勝行(馬場記念病院 消化器科), 河内屋 友宏(馬場記念病院 消化器科), 原 順一(馬場記念病院 消化器科), 渡辺 憲治(大阪市立大学消化器内科学), 荒川 哲男(大阪市立大学消化器内科学)
抄録 [症例]60歳台、女性。[主訴]食思不振、水様便。[既往歴]腸閉塞のため20年前に手術。関節リウマチに対して約10年前から他院でサラゾスルファピリジンの内服治療を継続中。[現病歴]1か月前から食思不振と1日2~3回の水様便が出現し歩けなくなったため当院を受診し、精査加療目的で入院となった。[現症] 発熱なし。腹部は軽度の張りを認め、腸蠕動音は微弱で、圧痛は認めなかった。両手指PIP関節の変形性拘縮を認めた。血液検査上、白血球5200/μl、CRP 3.05 mg/dlと炎症反応は軽度上昇していた。血清アルブミン値は2.1 g/dlと著明に低下していた。血清アミロイドA蛋白 (SAA) 値は204 μg/ml (基準値8μg/ml以下) と高値を認めた。単純CT検査では中等量の胸腹水貯留を認めた。内視鏡検査では十二指腸球部から下行脚の広範囲に浅い潰瘍性病変を認めた。S状結腸から直腸の粘膜は浮腫状で広範囲に発赤および血管透見像消失、粘膜内出血を認めた。十二指腸粘膜の生検で、コンゴ・レッド染色陽性かつ緑色偏光する硝子様物質の沈着を認めた。以上から、関節リウマチに伴う消化管アミロイドーシスと診断した。[経過]入院時より約1ヵ月間は、絶食、中心静脈栄養を施行したが症状の改善は乏しく栄養状態の改善も認めなかった。抗IL-6受容体抗体Tocilizumab (TCZ) を導入したところ、導入後数日で手指の関節痛は改善し、下痢も徐々に改善傾向を認めた。これに伴い経口摂取量も増加し、血清アルブミン値も上昇し導入2か月後には3.2g/dlまで改善した。SAA値はTCZ導入後に低下し、導入2カ月後に完全な正常化が確認された。導入4カ月目の内視鏡検査において、十二指腸球部から下行脚に認められた潰瘍は瘢痕化し、S状結腸から直腸にみられた浮腫・びらんは消失し血管透見像も回復していた。[考察]今回関節リウマチに伴う消化管アミロイドーシスに対してTCZを導入し著効した一例を経験した。今回検索しえた範囲では極めて稀であり、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 消化管アミロイドーシス, Tocilizumab