セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F3-1:

突然の腹痛と発熱で発症した腸間膜原発悪性リンパ腫の一例

演者 中原 麻帆(天理よろづ相談所病院 消化器内科)
共同演者 木田 肇(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 大村 亜希奈(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 吉川 貴章(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 美馬 淳志(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 岡部 誠(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 森澤 利之(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 塩 せいじ(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 宮島 真治(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 岡野 明浩(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 沖永 聡(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 大花 正也(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 久須美 房子(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 鍋島 紀滋(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 西内 綾(天理よろづ相談所病院 腹部一般外科), 加藤 滋(天理よろづ相談所病院 腹部一般外科), 吉村 玄浩(天理よろづ相談所病院 腹部一般外科)
抄録 【症例】61歳,男性【主訴】腹痛,発熱【既往歴】なし【現病歴】入院前日の昼からの突然の上腹部痛および37.9 ℃の発熱を主訴に当院を受診した.来院時,臍部から左下腹部にかけて自発痛,強い圧痛を認め,血液検査所見ではWBC9700,CRP0.9と軽度の炎症所見を認めた.腹部超音波検査にて疼痛部位に一致して48×51×35mm大,内部不均一で境界明瞭な腫瘤を認めた.腹部造影CT検査では腸間膜内に46mm大の隔壁のない内部比較的均一な嚢胞性病変を認めた.腸間膜嚢胞,嚢胞内感染の合併を疑い, 抗生剤(CMZ1g×2/day)の投与を開始したが,腹痛の増悪,発熱,炎症所見の悪化(WBC12700,CRP10.0)が見られたため,第3病日に緊急開腹腫瘤摘出術(小腸部分合併切除)を施行した.腫瘤は弾性硬で,比較的境界は明瞭で小腸間膜根部に位置していた.また,後腹膜と炎症性に軽度の癒着を伴っていた.病理組織検査では腫瘤は充実性で,内部には変性壊死や出血が目立ち,周囲脂肪組織に膿瘍形成を来たしていた.腫瘍細胞は中~大型細胞が多くを占め,免疫組織学的にはCD20+,CD79α+,BCL-2+,CD3-でびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.Ann Arbor分類ではStage1Eであった.術後は症状および炎症反応ともに改善し,術後8日目に軽快退院された.退院後,全身CT検査やFDG-PET検査などで他病変は認められず,腸間膜原発悪性リンパ腫と診断した.当院血液内科にてフォロー中である.【考察】腸間膜原発悪性リンパ腫は全悪性リンパ腫の中でも非常に稀であるとされる.腸間膜という部位のため,症状が乏しく,進行した状態で発見されることが多い.本症例は突然の強い腹痛や発熱を契機に当院を受診された.腫瘤内の変性壊死や出血のため,画像上,嚢胞性腫瘤が強く疑われ術前診断に難渋した.腸間膜腫瘍についての一般的な文献的考察もあわせここに報告する.
索引用語 悪性リンパ腫, 腸間膜腫瘍