セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F5-4:

膵頭十二指腸切除後の膵外分泌機能低下と非アルコール性脂肪性肝疾患に対し,パンクレリパーゼが有効であった1例

演者 東田 歩(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科)
共同演者 八幡  晋輔(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 松浦 敬憲(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 白川 裕(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), さか本 喜雄(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 大内 佐智子(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 堀田 和亜(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 廣畑 成也(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 尹 聖哲(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 當銘 成友(加古川東市民病院)
抄録 症例は62歳女性.主訴は易疲労感と腹部膨満.当院入院の24か月前に下部胆管癌,早期胃癌に対し,前医外科で膵頭十二指腸切除術(PD)を施行された.術後8か月のCTで著明な脂肪肝が出現し,術後20か月に血清Alb 1.3g/dlと著明な低アルブミン血症および腹水貯留を認めた.食事摂取は良好で,前医での精査にて消化管出血はなく,尿蛋白陰性,シンチにて蛋白漏出性胃腸症を疑う所見なし,便中脂肪陰性,腫瘍再発や感染等消耗性疾患もなし.腹部エコーでは高度脂肪肝・慢性肝障害の像で,肝生検では中等度の大滴性脂肪化と中等度の線維化を認め,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に伴う低アルブミン血症を考慮され当院紹介受診となった.PFD試験を施行したところ53%と低下を認め,PD後の膵外分泌機能低下およびNAFLDにより低アルブミン血症を来したと考えた.早急な栄養管理が必要と判断し,中心静脈栄養と成分栄養剤を併用しながら,分岐鎖アミノ酸製剤およびパンクレリパーゼ1800mg/日の投与を行った.3週間で血清Alb 2.0g/dlまで改善を認めたため,中心静脈栄養を中止し,退院.血清Alb は退院後2週で2.8g/dl,6週で3.4g/dlと著明な改善を認めた.成分栄養剤はその後漸減し,退院後4か月の時点で血清Alb 3.3g/dl,腹部エコー/CTにて脂肪肝の改善を確認したため以後中止.退院後5か月の時点でAlb 3.6g/dlと栄養障害の増悪を認めていない.PD後の新規NAFLD発症頻度は30-40%程度と報告されており,発症機序は不明であるものの膵外分泌機能低下が深く関与していると考えられている.新規NAFLD発症群は非発症群と比較して血清Albも低値であるという報告がみられる.これまで使用されていた消化酵素剤は,常用量では酵素の力価が低く,通常の2-8倍の膵酵素大量補充療法が行われていたが,2011年7月に保険適応となったパンクレリパーゼは常用量で有効とされる.PD後の膵外分泌機能低下とNAFLDに対し,パンクレリパーゼが有効であった1例を経験したため報告する.
索引用語 パンクレリパーゼ, 膵頭十二指腸切除後