セッション情報 シンポジウム1 「ウイルス性肝炎治療の最前線」

タイトル S1-10:

慢性C型肝炎に対する3剤併用療法の治療効果と次世代治療への課題(Kobe Hepatitis Therapeutic Group)

演者 矢野 嘉彦(神戸大学病院 消化器内科+)
共同演者 斉藤 雅也(神戸大学病院 消化器内科+), 金 守良(神戸朝日病院 内科), 東 健(神戸大学病院 消化器内科+)
抄録 【目的】慢性C型肝炎に対する3剤併用療法の有効性について、ウイルス側・宿主側因子を含めた治療効果に関わる因子解析を行った。また、再燃無効例については、次世代治療に向けてNS3領域の薬剤耐性変異についても解析を加えた。
【対象と方法】テラプレビル併用3剤併用療法を行った慢性C型肝炎50例(年齢56.9±9.9、34~80歳、男性33名・女性17名)を対象とした。治療終了後4週におけるウイルス陰性化(SVR4)の得られた症例と得られなかった症例(nSVR4)の比較検討を行った。宿主側因子としてIL28B遺伝子多型(rs8099917)、ウイルス側変異としてNS5A(ISDR,IRRDR領域)の変異数およびCore 70のアミノ酸変異についてPCR-Direct sequencing法によって検討した。
【結果】治療後4週の経過観察を行った29例では、治療開始後4週におけるウイルス陰性化(RVR) 26例(90%)、SVR4 20例(69%)であった。SVR4の得られた症例は全例RVRが得られていた。経過中ウイルス陰性化が得られなかったNVRは3例認められた。SVR4が得られた症例は、IL28B SNP TT 89%、TG/GG 36%と有意にTT群で高率(p<0.01)であった。治療前ウイルス変異については、IRRDR4以上(SVR4 71%)とIRRDR4未満(58%)、Core70 Wild(SVR4 64%)とMutant(60%)であり、有意差は見られなかった。
NS3領域変異については、nSVR10例中治療後に薬剤耐性を検出した症例は5例であり、うち4例がV36G+Q80L、1例がT54Aであった。これらの耐性変異はいずれも第2世代NS3プロテアーゼ阻害剤の治療耐性となりうる遺伝子変異であった。
【結論】テラプレビル併用3剤併用療法でもSVRが得られない症例には、IL28B TG/GGが多く、治療後獲得変異を含めてNS3薬剤耐性変異を有する場合があり、今後の第二世代プロテアーゼ阻害剤治療に向けての課題であると考えられた。
索引用語 慢性C型肝炎, テラプレビル