セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F1-3:

早期胃管癌に対するESD後の遅発穿孔により膿胸を合併した1例

演者 友田 如(大阪大学 医学部 消化器内科)
共同演者 長井 健悟(大阪大学 医学部 消化器内科), 加藤 元彦(大阪大学 医学部 消化器内科), 山田 拓哉(大阪大学 医学部 消化器内科), 名和 誉敏(大阪大学 医学部 消化器内科), 重川 稔(大阪大学 医学部 消化器内科), 江崎 久男(大阪大学 医学部 消化器内科), 宮崎 昌典(大阪大学 医学部 消化器内科), 新崎 信一郎(大阪大学 医学部 消化器内科), 薬師神 崇行(大阪大学 医学部 消化器内科), 西田 勉(大阪大学 医学部 消化器内科), 巽  智秀(大阪大学 医学部 消化器内科), 平松  直樹(大阪大学 医学部 消化器内科), 辻井 正彦(大阪大学 医学部 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学 医学部 消化器内科)
抄録 症例は60歳代男性。当院にて2006年胸部中部食道癌(pT3N2M0, StageIII)に対し右開胸食道亜全摘、2領域リンパ節郭清、後縦隔経路胃管再建を施行、以後再発はなかった。2012年5月上部消化管内視鏡検査にて胃管下部前壁に径25mm大の0-IIa、胃管中部大弯に径10mm大の0-IIaを認め、ESD目的にて当科入院となった。ESDはフラッシュナイフBT2.5mmにて施行し、術中、特に偶発症を認めずに病変をそれぞれ60分、50分で一括切除し治療終了した。術後30時間後に急激な右背部痛、呼吸苦が出現したため胸部CT検査を施行したところ、右気胸、縦隔気腫、両側に少量の胸水貯留を認め、遅発穿孔と診断した。手術は侵襲性が高いことから絶飲食、経鼻胃管による減圧および抗菌薬(MEPM 2g/日)による保存的加療を行った。しかし、その後も炎症所見の改善は認められず発熱が持続しため、Day 8に胸部CT検査を再検したところ、右下肺野にniveauを伴う胸水貯留を認め、膿胸と診断、引き続き右第8肋間中腋窩線より24Frダブルルーメントロッカーを挿入してドレナージを行った。以後すみやかに炎症所見は改善し、胸部単純X線検査で右下肺の含気も改善した。Day 14の上部消化管内視鏡検査では、穿孔部位は確認できず、胸部CT検査でも胃管周囲のair像は消失していたため、経鼻胃管を抜去し飲水を開始した。炎症再燃が無いことを確認のうえ、Day 21より流動食を開始し、Day 25に胸腔トロッカーを抜去、その後も経過は良好でありDay 39に退院した。切除標本の病理組織所見は、胃管中部大弯の病変は腺腫で、胃管下部の病変は深達度mの中分化型腺癌であったが、リンパ管侵襲を認めた。その後S-1による化学療法を行い、現在も再発なく外来通院中である。本症例は、手術操作による癒着が原因で、胃管穿孔の際に炎症が波及し胸水、膿胸に至ったが、穿孔部が胸腔と連絡していたために重篤な縦隔炎には至らず、胸腔ドレナージにより保存的に治療しえたと考えられた。胃管ESD後の膿胸は医学中央雑誌で検索しても1例の報告があるのみの極めてまれな偶発症であり、貴重な症例であると考えられたため報告する。
索引用語 ESD, 膿胸