セッション情報 パネルディスカッション1 「肝・胆・膵腫瘍性病変早期発見に向けた取り組み」

タイトル P1-03:

肝細胞癌の早期発見を目指したリスク因子解析

演者 青木 智子(兵庫医科大学 内科 肝胆膵科DELIMITER兵庫医科大学 超音波センター)
共同演者 西口 修平(兵庫医科大学 内科 肝胆膵科), 飯島 尋子(兵庫医科大学 内科 肝胆膵科DELIMITER兵庫医科大学 超音波センター)
抄録 【目的】HCCの発症リスクについて、ウイルス性肝炎の罹患、硬変肝への進展などが示されているが、臨床的肝硬変の所見に乏しくとも発癌する症例が少なからず存在する。非侵襲的検査のみで発癌リスクの高い症例を囲い込めるか検討を行った。【方法】H19/1~H25/1にVTQを施行した慢性肝疾患1203例(男性593例、平均年齢59.3歳)を対象とした。(1)VTQにより測定したせん断弾性波速度(Vs)と相関する因子を多変量解析で検討した。(2)VTQと同じ日にのべ849例はShear wave Elastography(SWE)を、のべ1717例はFibroscanを施行しており、VTQとの相関関係を検討した。(3)1203例のうち初診時に発癌歴のない症例を追跡し、経過中に発癌した症例(Mid-carc群45例)と発癌しなかった症例(Never-carc群860例)、初診時すでに発癌歴を有する症例(Past-carc群298例)の差異を多変量解析で比較検討した。【成績】(1)重回帰分析の結果、Vsと最も強い正の相関を示した因子は肝生検のfibrosisであり(標準化偏回帰係数β0.336)、他にもヒアルロン酸(β0.210)、γGTP(β0.138)、Plt(β-0.189)、PT-INR(β0.109)が有意な相関を示した(p<0.05)。(2)VTQとSWEの相関はSWE=0.59+0.85×VTQで表され、R0.755と強い相関を示した(p<0.001)。Fibroscanも同様に、Fib=-6.05+10.97*VTQ、R0.690と良好な相関を示した(P<0.001)。(3)単変量解析では、Past/Mid-carc群と比較して、Never-carc群では若年女性、脂肪肝の合併率が有意に高く、VTQは低値、線維化マーカー・腫瘍マーカー・血糖値が有意に低いことが示された(P<0.001)。肝生検の結果では、Never-carc群で有意にF1/A1が多く、Past/Mid-carc群でF4/A2が多かった(p<0.05)。多項ロジスティック回帰分析でNever-carc群とMid/Past-carc群を比較した結果、高齢(Odds ratio[OR]1.93/2.32)、男性(OR2.77/4.24)で肝臓の硬い症例(OR2.38/1.89)で発癌のリスクが高いことが示された(p<0.001)。【結語】非侵襲的線維化診断は肝線維化と最も強く相関し、発癌スクリーニングにも有用である可能性が示唆された。
索引用語 VTQ, Shear wave