セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y3-03:

出血を契機に発見された限局性小腸拡張症の一例

演者 岡本 直樹(京都市立病院)
共同演者 元好 貴之(京都市立病院), 水野 直樹(京都市立病院), 川本 雄規(京都市立病院), 高井 孝治(京都市立病院), 宮川 昌巳(京都市立病院), 西方 誠(京都市立病院), 山下 靖英(京都市立病院), 桐島 寿彦(京都市立病院), 吉波 尚美(京都市立病院), 新谷 弘幸(京都市立病院)
抄録 【症例】26歳男性【主訴】腹痛、下血【既往歴】うつ病【現病歴】2001年に下血で当院入院し、大腸内視鏡検査を施行したが出血源の特定には至らず、2006年にも下血したが自然軽快した。2012年7月に腹痛と暗赤色の下血が出現したため当院緊急入院となった。【入院時現症】意識清明、バイタルサイン異常なく、腹部は平坦軟であり、右季肋部に圧迫感を認めた。血液検査ではHb 9.9g/dlと貧血を認め、BUNの軽度上昇を認めたが、炎症所見は認めなかった。【経過】入院時、腹部CTでは右横隔膜下に拡張腸管を認めたが、3日後のCTでは拡張腸管は骨盤内に移動していた。上・下部内視鏡検査を施行したが、出血源は同定できなかったため、カプセル内視鏡を施行したところ、空腸に拡張した腸管を認めた。小腸造影では近位空腸に限局的な腸管拡張が描出され、可動性は良好であったが、拡張部の口側及び肛門側に有意な狭窄は認めなかった。経口ダブルバルーン内視鏡では、空腸に限局的に拡張した腸管を認め、肛門側には白苔を伴った潰瘍を認めており、同部位が出血源であったと考えた。拡張部の生検結果では正常小腸粘膜であり、限局性小腸拡張症を疑った。過去に3度の下血を繰り返しており今後も出血のリスクが高いと判断し、十分なインフォームドコンセントの下、腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した。術中所見では正常部から連続するように約20cmの拡張腸管を認めたが、色調などに異常は認めなかった。切除標本のHE染色では拡張部は固有筋層が軽度肥厚していたが、粘膜やその他部位に炎症・腫瘍は認めず、Auerbach神経叢の分布異常は認めなかった。【考察】本症例では空腸拡張以外に小腸憩室や上行結腸の内側偏移、腸管癒着などを認めており、先天的な腸管異常が疑われた。比較的稀な、成人における限局性小腸拡張症の症例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 小腸拡張, 下血