セッション情報 一般演題

タイトル 14:

肝膿瘍を合併した新規発症潰瘍性大腸炎の1例

演者 山田 展久(松下記念病院 消化器科)
共同演者 高山 峻(松下記念病院 消化器科), 向井 理英子(松下記念病院 消化器科), 酉家 章弘(松下記念病院 消化器科), 沖田 美香(松下記念病院 消化器科), 磯崎 豊(松下記念病院 消化器科), 長尾 泰孝(松下記念病院 消化器科), 小山田 裕一(松下記念病院 消化器科)
抄録 【症例】20代、女性【主訴】発熱、血便、腹痛【既往歴】特記事項なし【家族歴】母:潰瘍性大腸炎【現病歴】2013年1月に腹痛、血便を生じ、3月末に39度台の発熱を生じたため当院受診した。4月初旬に施行した下部消化管内視鏡検査にて、直腸から下行結腸まで連続した、血管透見の消失、びらんを認めた。便培養、生検検体鏡検にて、感染性腸炎、アメーバ腸炎は否定的であり、左側大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断し(第0病日)、同日5-ASA製剤内服を開始した。血便は消失するも発熱が続くため、第3病日にPSL 20mgの内服を開始した。同日の血液検査で、軽度の肝機能障害を認めていた。しかし以後も発熱が続くため、第7病日に胸腹部CTを施行したところ、肝S5に65mm大の肝膿瘍を認めたため同日緊急入院となった。【入院後経過】メロペネム2g/日の投与を開始するも発熱が続いたため、第10病日に経皮経肝膿瘍ドレナージ術(PTAD)を施行した。膿汁の鏡検でアメーバは認めず、培養ではα溶血性連鎖球菌を検出した。PTAD後発熱は軽快し膿瘍も縮小したため、第14病日に抗生剤を中止し第18病日にPTADチューブを抜去した。経過良好で第21病日に退院となったが、その後膿瘍の再発は見られず、潰瘍性大腸炎に対して5-ASA製剤にてコントロール中である。【考察】潰瘍性大腸炎に肝膿瘍を合併する症例は比較的まれであるが、活動期潰瘍性大腸炎では門脈内菌血症の存在も報告されており、経門脈的経路での感染の可能性が示唆されている。ステロイド治療による易感染性からの肝膿瘍合併の報告もあるが、ステロイド先行治療が無い報告もあり、本症例でもステロイド先行治療から肝膿瘍診断までが短期間であったことと、第3病日の血液検査で軽度の肝機能障害を認めたことから、おそらくステロイド治療開始時には肝膿瘍を発症していたと推察される。潰瘍性大腸炎初発時に肝膿瘍を合併していた症例を経験したため、多少の文献的考察を含めて報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 肝膿瘍