セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F1-6:

HXP療法の経過中に癌性髄膜炎を発症したHER2陽性進行胃癌の一例

演者 岩破 敏郎(京都市立病院 消化器内科)
共同演者 川本 雄規(京都市立病院 消化器内科), 西方 誠(京都市立病院 消化器内科), 水野 直樹(京都市立病院 消化器内科), 岡本 直樹(京都市立病院 消化器内科), 高井 孝治(京都市立病院 消化器内科), 宮川 昌巳(京都市立病院 消化器内科), 元好 貴之(京都市立病院 消化器内科), 山下 靖英(京都市立病院 消化器内科), 桐島 寿彦(京都市立病院 消化器内科), 吉波 尚美(京都市立病院 消化器内科), 新谷 弘幸(京都市立病院 消化器内科)
抄録 症例は62歳男性、特記すべき既往なし。食思不振を主訴に近医を受診し、肝機能障害を指摘されたため精査目的に当科外来を受診した。CTで進行胃癌、多発リンパ節転移が疑われ上部消化管内視鏡検査をしたところ、胃体部前壁を中心に広範な3型腫瘍を認めた。更に脊椎MRI、骨シンチグラフィにて全脊椎、胸骨、肋骨、骨盤への多発骨転移を認めた。血液検査所見では進行性の血小板減少を認め、FDP高値、D-dimer高値などの所見から腫瘍性DICを併発していたため、胃癌の治療を緊急で行うとともにDICの治療を行うこととなった。
入院後4日目に胃癌の確定診断を得て翌日より5-FU持続療法で化学療法を開始したが、HER2陽性が確認されたためtrastuzumab を追加投与し、2コース目からtrastuzumab+cisplatin+capecitabine(HXP療法)に変更した。
以後、HXP療法をベースとした化学療法を計6コース行い画像的にPRと判定していたが、6コース目終了後より嘔気が出現し徐々に増悪した。化学療法に伴う有害事象と判断し対症療法を試みたが改善せず、更に構音障害、歩行障害、後頸部痛が出現、精査目的に採取した髄液から腺癌細胞を多数指摘され、癌性髄膜炎の診断となった。
御家族の強い希望により積極的治療を行わない方針となり、その後意識障害が徐々に進行し昏睡状態となり、癌性髄膜炎の診断後14日目に永眠された。
病理解剖を行ったところ、胃の原発巣には腺癌の残存が確認されたものの、腫脹リンパ節はなく、脊椎には線維化巣を認めるのみで腫瘍細胞は確認されず、組織学的には化学療法がある程度の効果を収めていたと考えられた。
HXP療法はHER2陽性胃癌患者に対して有効であるが、一方で癌性髄膜炎を発症した場合その予後は極めて不良である。今回、HXP療法によりPRと思われたが癌性髄膜炎を発症したHER2陽性進行胃癌の一例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 trastuzumab, 癌性髄膜炎