セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F3-2:

酸性トイレ洗浄剤(商品名:サンポール)の服用にて小腸狭窄を来した一例

演者 松尾 祥平(高島市民病院 内科)
共同演者 小泉 聡(高島市民病院 内科), 上野 哲(高島市民病院 内科), 池野 嘉信(高島市民病院 外科)
抄録 【症例】45歳、男性【主訴】下血
【現病歴】精神障害による生活困難のため救護施設入所中の患者。平成24年11月、施設にて酸性トイレ洗浄剤(商品名:サンポール・9.5%塩酸)を約20ml自殺目的に服用しているところを発見され当院救急搬送された。当院救急外来にて酸化マグネシウムを投与され、他院(単科精神科病院)に入院となった。他院入院後、下血が続き、貧血が進行するため、服用2日後、精査加療目的に当院転院となった。
【既往歴】統合失調症、気管支喘息、胃潰瘍(胃切除後Billroth II法再建後)
【経過】臨床経過と入院時のCTより出血性胃腸炎と診断。食道の腐食性変化が予想されたため、緊急上部消化管内視鏡検査は施行せず、絶食、オメプラゾール点滴にて保存的に加療の後、入院11日目に上部消化管内視鏡検査を施行した。食道胃接合部や胃噴門部、小腸輸出脚に潰瘍形成を認めるものの経口摂取可能と判断し、経口摂取開始した。経口摂取進めていたところ入院22日目、腹痛の著明な増悪を認めたため、腹部XP、CTにて精査したところ小腸イレウスを認め、イレウスチューブ挿入し保存的に加療する方針とした。しかしその後も保存的には改善を認めず、小腸造影検査施行したところ、骨盤内小腸に約12cmに渡る高度狭窄を認めた。そのため、手術適応につき外科コンサルトし、入院46日目、腹腔鏡補助下小腸部分切除術が施行された。
【考察】過去30年間の本邦文献を検索し得た限りでは、酸性トイレ洗浄剤(サンポール)服用にて消化管障害を呈した例は、本症例を含め計34例の報告があった。しかし、食道狭窄、胃狭窄(特に幽門部狭窄)の報告が多く、酸性トイレ洗浄剤(サンポール)服用での小腸狭窄を来した報告例は本症例以外に認めなかった。化学薬品の服用にて小腸障害を呈した報告例は本邦では塩化カルシウム誤飲にて小腸壊死を来した胃全摘術後の患者の1例のみであった。本症例も胃切除後(Billroth II法再建後)であり、幽門輪が存在せず、塩酸が胃内に留まることなく、小腸に到達したことが、小腸狭窄を来した一因と考えられた。
索引用語 酸性トイレ洗浄剤, 小腸狭窄