共同演者 |
宮崎 昌典(大阪大学 消化器内科), 江崎 久男(大阪大学 消化器内科), 重川 稔(大阪大学 消化器内科), 加藤 元彦(大阪大学 消化器内科), 名和 誉敏(大阪大学 消化器内科), 新崎 信一郎(大阪大学 消化器内科), 藥師神 崇行(大阪大学 消化器内科), 西田 勉(大阪大学 消化器内科), 山田 拓哉(大阪大学 消化器内科), 阪森 亮太郎(大阪大学 消化器内科), 巽 智秀(大阪大学 消化器内科), 平松 直樹(大阪大学 消化器内科), 辻井 正彦(大阪大学 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学 消化器内科) |
抄録 |
食道癌と食道静脈瘤は病態を異にする疾患であるが、稀に両者の合併がみられる。今回、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)による静脈瘤治療を先行して行うことで多量の出血を来すことなく表在食道癌の内視鏡治療を施行し得た2症例を経験したので報告する。【症例1】70歳代女性。NASH由来の肝硬変にて他院通院中、上部消化管内視鏡検査(EGD)にて表在食道癌と同病変直下の食道静脈瘤を認め当科紹介。EGDでは切歯23~26cmに約半周性の0-IIc病変を認め、深達度T1a-EP/LPMと考えられた。また食道静脈瘤LsF1CbRC0を認め、腫瘍は静脈瘤上に存在していた。血小板10万/μl、Child-Pugh scoreは7点であった。EVLによる静脈瘤治療を先行し、3週間後に超音波内視鏡(EUS)で病変直下の静脈瘤の血栓化を確認した後、食道癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行。病理診断では、Squamous intraepithelial neoplasia, high grade, 30×22mm, pT1a-EP, ly0, v0, pHM0 , pVM0であった。【症例2】80歳代男性。C型肝硬変があり、6年前に門脈内腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対して肝動注化学療法を施行し腫瘍の完全消失が得られ、以後再発なく経過、また4年前に食道静脈瘤に対しEVLを施行した既往あり。経過観察のEGDにて切歯27~30cmに約半周性の0-IIc病変を認め、深達度T1a-EP/LPMと考えられた。また、食道静脈瘤LmF1CbRC0を認め、腫瘍は静脈瘤上に存在していた。血小板5万/μl、Child-Pugh scoreは7点であった。EVLを先行し、3週間後にEUSで血栓化を確認した後、ESDを施行。しかし術中に誤嚥による呼吸状態の悪化を認めたため中断し、ESDはリスクが高いと判断しアルゴンプラズマ凝固による腫瘍焼灼を行った。退院後のEGDで肛門側に遺残を認め、2か月後にAPCを追加し、その後2年間再発なく経過観察中である。食道癌に対する内視鏡治療は一般に胃に比べ難しく、さらに静脈瘤合併例では出血のリスクが高く治療困難であるが、食道静脈瘤に対する治療を先行することで合併する食道癌に対する治療を比較的安全に行うことが可能であると考えられ、文献的考察を加えて報告する。 |