セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y7-08:

膵性胸水を呈し、胃穿通により軽快した膵仮性嚢胞の1例

演者 井上 達也(製鉄記念広畑病院 内科)
共同演者 田淵 真彦(製鉄記念広畑病院 内科), 清  裕生(製鉄記念広畑病院 内科), 中村  久美子(製鉄記念広畑病院 内科), 森澤  俊英(製鉄記念広畑病院 内科), 山内  健史(製鉄記念広畑病院 内科), 日並  義統(製鉄記念広畑病院 内科), 上山  茂充(製鉄記念広畑病院 内科), 藤澤  貴史(製鉄記念広畑病院 内科), 吉田 智美(製鉄記念広畑病院 外科)
抄録 【症例】50歳代、男性【既往歴】胃潰瘍、アルコール性慢性膵炎、早期胃癌【主訴】背部痛、食欲低下【現病歴】2012年9月より、アルコール性慢性膵炎、膵仮性嚢胞を指摘され当院通院中であった。2012年11月頃に腹部に激烈な痛みが出現したが、徐々に消失したので放置していた。その後、食欲低下、背部痛を自覚し2012年12月中旬に当院内科を受診、気胸を伴う胸水とアルコール性慢性膵炎の急性増悪の診断で入院となった。【経過】入院後、胸腔ドレナージを施行したところ褐色の漿液性の胸水がみられ、胸水検査にてアミラーゼ高値であった.また,腹部CTで膵尾部から左横隔膜下に交通する仮性膵嚢胞を認め、さらに胃壁に接する仮性膵嚢胞も伴っていた。以上より膵管胸腔瘻による膵性胸水と診断した.その後,血痰や肺膿瘍による敗血症まで至ったが,経鼻的膵管ドレナージ(ENPD)により、徐々に胸水は減少し,膵炎も軽快傾向であった.しかし,仮性膵嚢胞の縮小はなく,再燃の可能性が十分に高いため, 2013年2月上旬に膵体尾部切除の予定とし,一時退院となった。ところが,退院3日後に左側胸背部痛が出現し,膵仮性膵嚢胞の増大と左側胸水を認めた.さらに入院数日後にはタール便を認めた.緊急上部消化管内視鏡を施行したところ、胃体上部後壁の壁外性圧迫の頂部から出血を認め,膵仮性嚢胞の胃内穿通と診断した. 全身状態低下のため,手術を延期となったが,保存的加療にて胃内出血は自然止血され,胃壁に接する膵仮性膵嚢胞の縮小を認めた.さらに,1ヵ月後は膵管と交通する左横隔膜下の仮性膵嚢胞や胃壁と接する嚢胞は消失した.その後,ENPDチューブ抜去後も,胸水の再燃なく食事摂取可能となり、2013年3月中旬に退院となった。以降、手術することなく2か月再発を認めていない。【考察】膵仮性嚢胞は消化管や胸腔への周囲臓器への穿通が報告されており,治療に難渋することがある.今回,我々は膵仮性嚢胞の胃内穿通により膵性胸水が軽快したと考えられた1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵仮性嚢胞, 膵性胸水