セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F5-6:

膵石による主膵管拡張を伴う慢性膵炎に発生した分枝型IPMCの1例

演者 小澤 祐樹(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野)
共同演者 竹中 完(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 平田 祐一(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 那賀川 峻(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 小林 隆(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 塩見 英之(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 増田 充弘(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 有坂 好史(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 久津見 弘(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 東 健(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 松本 逸平(神戸大学医学部付属病院 肝胆膵外科), 具 英成(神戸大学医学部付属病院 肝胆膵外科), 原 重雄(神戸大学医学部付属病院 病理診断科), 伊藤 智雄(神戸大学医学部付属病院 病理診断科)
抄録 症例は74歳男性。以前より慢性膵炎を指摘されており、2009年には膵頭部主膵管内に膵石を指摘された。その際より膵石尾側主膵管の拡張が認められERCPを施行されたが膵石尾側膵管は造影されずガイドワイヤーも膵石を超えなかった。自覚症状もなかったため経過観察されていたが、2011年9月に主膵管拡張の増悪を認めた為、精査加療目的で当院当科紹介となった。造影CTでは既知結石および主膵管、分枝膵管の著明な拡張所見が認められ、膵頭部(膵石の尾側)腹側に隣接する造影効果の乏しい腫瘤が指摘された。2009年の他院CTでも同腫瘤は小結節として確認された。MRI検査ではT1highT2lowであり、EUSでは境界明瞭、辺縁整な15mm大の類円形低エコー腫瘤として描出され、造影EUSでは若干の血流は認められるもののhypovascular patternであった。PET検査では集積亢進は認められなかった。ERCPを施行したが前回同様にガイドワイヤーは膵石を超えなかった。腫瘤からのEUS-FNAにてadenocarcinomaと診断されたが、FNA後に急性膵炎をきたし、膵頭部に仮性嚢胞を形成した。仮性嚢胞は手術までに自然に軽快し、同年11月に亞全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理学的組織評価では拡張した膵管内を主体とし胞体内に粘液を含有する異型細胞が不規則な乳頭状構造を形成しながら増殖し、腫瘍の主座は主膵管ではなく分枝膵管であった。間質への浸潤も認められinvasive IPMCと診断された。本症例は膵石の影響はあるものの著名な主膵管拡張を呈し、IPMCであれば病変は主膵管に首座がありMUC2陽性のintestinal typeが予想されたが、実際は分枝が首座であり、粘液染色ではMUC2陰性であった。腫瘤は分枝型IPMCでありFNA後の膵炎は嚢胞成分の穿刺による影響の可能性が考えられるが、術前画像にて嚢胞成分は指摘できなかった。本症例では分枝型IPMCの増大、主膵管進展による粘液産生増大が膵石による流出障害に加わり、主膵管拡張が増悪した可能性が考えられるが、病変は2年前より存在しておりIPMCの自然史をみていた可能性がある。文献的考察を加えて報告する。
索引用語 IPMN, EUS-FNA