セッション情報 シンポジウム2 「原因不明消化管出血の診断と治療の最前線」

タイトル S2-01:

当院で経験した十二指腸憩室出血例の検討

演者 山田 真也(京都第一赤十字病院)
共同演者 鈴木 隆裕(京都第一赤十字病院), 戸祭 直也(京都第一赤十字病院), 吉田 憲正(京都第一赤十字病院)
抄録 【はじめに】当院は年間10000件を超える内視鏡検査を行う地域の中核病院で、第3次救急医療を担当しているため時間外の消化管出血に対する緊急内視鏡検査についても積極的に対応している。2008年1月から2013年4月までの上部消化管緊急内視鏡症例を対象に検討すると、十二指腸憩室からの出血を5例に認めた。そのうち2例は前医での内視鏡検査でも出血源は同定困難な症例であった。【症例1】73歳女性。心房細動でワーファリン内服中。吐下血、貧血進行あり近医入院。上部消化管内視鏡検査施行するも出血部位は特定できなかった。絶食経過観察中、さらに大量下血があり当院紹介。当院転院後、初回の内視鏡検査で十二指腸憩室内に点状びらんを認めた。経過観察中に貧血進行あり緊急検査を行うと同部位より噴出性出血を認め、クリッピング止血を行った。以後、再出血なく経過良好で退院となった。【症例2】61歳女性。胃全摘後、慢性腎不全で維持透析中。黒色便と貧血の進行を認め、上部消化管内視鏡検査を施行するも出血部位は特定困難であった。その後も貧血進行、黒色便が持続するため当院紹介。輸入脚盲端に憩室が複数存在し、そのうち1か所から湧出性出血を認め、クリッピング止血を行った。以後、貧血進行認めず、退院となった。【結語】前医で出血源同定が困難であった十二指腸憩室出血の2例を経験した。いずれの症例も消化管出血の危険因子を有しており、出血源の同定に際しては症状出現時の迅速な検査施行と先端フード装着による十二指腸の詳細な観察が有用と考えられた。近年、下部消化管出血の原因として結腸憩室からの出血例は増加傾向にあるが、上部消化管出血の原因としても十二指腸憩室からの出血も念頭に置いて、十二指腸下行脚まで詳細に観察することが肝要であると思われる。発表に際しては当院で経験した5例の十二指腸憩室出血例について、その臨床的特徴を分析するとともに、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 十二指腸憩室出血, 緊急内視鏡