抄録 |
【背景】本邦の自己免疫性膵炎(AIP)は国際コンセンサス診断基準における1型AIPがほとんどで,IBDの合併は稀とされる。われわれは潰瘍性大腸炎(UC)に合併したAIPに対して顆粒球単球除去療法(GMA)を行い,両疾患に効果を認めたことで2型AIPと診断に至った1例を経験したので報告する。【症例】67歳,女性,主訴は食欲低下と下痢。近医でUCの治療中に,腹部超音波検査で膵体部腫瘤と,CA19-9高値を指摘され,UCと併せて当院で精査紹介となった。造影CTで膵尾部に6×3cm大のびまん性腫瘤,体部と鉤部にも腫瘤影を認め,周囲膵実質に比して動脈相でlowに造影された。ERPで主膵管の体部から尾部に限局する狭窄を認めた。狭窄部の分枝膵管は正常像であり,膵癌よりはAIPが疑われた。MRCPでは膵尾部にソーセージ様腫大を認め,T2WIはiso,T1WIはlowを呈した。PETで同部位へのSUV集積は軽度で悪性の可能性は低かった。膵尾部腫瘤の確定診断のためEUS-FNAによる膵組織採取を行ったところ,免疫染色でIgG4陽性形質細胞は少数で,花むしろ状線維化等の1型AIPの所見を認めず,2型AIPに典型的な炎症像と考えた。GELは認めずICDC level 2と考え,UC治療への反応性で2型AIPと確定診断できると考えた。IBD は2型AIPの膵外病変である可能性が高いと考えられており,有症状のUCに対する治療を優先することとなった。CF所見はmayo 3点、CAI 13点であり寛解導入療法としてペンタサ4000mg/日とアザニン25mg/日の内服を開始し,GMA10回/24日間を行った。この間,食事経口摂取量は不十分で,中心静脈栄養を併用した。CAI 6点で改善を認め,食事経口摂取も可能となり退院した。外来で内服治療を継続し,治療開始から2ヵ月後のCF所見はmayo 1点、4ヵ月後の造影CTで膵尾部腫瘤は消失し,症状改善は維持されており,UCに合併した2型AIPと診断した。【考察】2型AIPに対するGMAの報告はなく、本例ではGMAがUCだけでなく2型AIPにも効果を示した。以上から2型AIPはUCと一連の病態である可能性が示唆される。若干の文献的考察を加えて報告する。 |