セッション情報 一般演題

タイトル 49:

乳糜腹水を呈した成人T細胞白血病(ATL)の1例

演者 岡部 誠(天理よろづ相談所病院 消化器内科)
共同演者 大村 亜紀奈(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 吉川 貴章(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 美馬 淳志(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 森澤 利之(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 塩 せいじ(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 宮島 真治(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 木田 肇(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 岡野 明浩(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 大花 正也(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 沖永 聡(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 久須美 房子(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 鍋島 紀滋(三菱京都病院 消化器内科), 前迫 善智(天理よろづ相談所病院 血液内科)
抄録 【症例】60歳代 女性【主訴】食思不振・腹部膨満感【既往歴】子宮頚癌術後・びまん性汎細気管支炎・サルコイドーシス・ATLキャリア【現病歴】2013年1月頃より食思不振と腹部膨満感があった。徐々に悪化したため、2013年3月に当科初診となった。腹部超音波検査で多量の腹水を指摘され、精査目的に入院となった。【入院後経過】腹水穿刺を施行したところ、乳糜腹水を認めた。性状は滲出性であったが、細胞診では悪性細胞は検出されなかった。血液検査ではCEA・CA19-9はどちらも正常値であったが、sIL-2R高値(28700U/ml)であった。悪性腫瘍の除外目的に施行した上部消化管内視鏡検査では体部中心に周囲に発赤を伴ったびらんが多発していたが、積極的に悪性病変を疑う所見は認めなかった。また胸腹部造影CT検査・FDG-PET検査を施行すると、腹水以外に、多発するリンパ節腫大(傍大動脈・縦隔・右横隔膜上・左鎖骨上窩・骨盤内・腸管膜)を認めた。この時点で悪性リンパ腫を考慮していたが、確定診断のために左鎖骨上窩のリンパ節生検を行った。その結果、表面マーカーでCCR4+と判明した。腹水中の表面マーカーも同様であった。ATLキャリアであることと併せて、診断は成人T細胞性白血病と考えられた。治療は血液内科に転科の上、化学療法を施行していくこととなった。【考察】乳糜腹水の原因として先天的にはリンパ系の形成不全、また二次的には、外傷や手術ならびに悪性腫瘍や炎症などによるリンパ管の損傷や破壊、または圧迫や閉塞によるリンパの腸管リンパ系への逆流などが考えられている。本症例では広範囲なリンパ系への腫瘍浸潤により、胸管や腸リンパ本管の通過障害を来たし、さらに腸管膜リンパ系への逆流からリンパ管の拡張・破綻をきたしたため、腹腔内へ乳糜が漏出したものと考えられる。悪性腫瘍による乳糜腹水は比較的稀であり、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 乳糜腹水, ATL