セッション情報 一般演題

タイトル 29:

Budd-Chiari症候群による難治性腹水にTIPSが奏功した1例

演者 伊藤 麻里(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学DELIMITERNTT西日本大阪病院 内科)
共同演者 宮崎 昌典(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 江崎 久男(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 重川 稔(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 小瀬 嗣子(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 薬師神 崇行(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 名和 誉敏(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 加藤 元彦(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 甲賀 啓介(医療法人 社団 駿甲会 コミュニティーホスピタル甲賀病院), 阪森 亮太郎(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 新崎 信一郎(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 西田 勉(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 巽 智秀(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 金子 晃(NTT西日本大阪病院 内科), 平松 直樹(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 辻井 正彦(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大学医学部付属病院 消化器内科学)
抄録 【症例】25歳男性【現病歴】生来健康。平成23年1月初旬から腹部膨満感を自覚し、急速に増悪したため近医を受診した。腹部CTで中等度の腹水、肝左葉の限局的な著明な腫大、さらに中肝静脈の閉塞を認め、Budd-Chiari症候群(BCS)が疑われた。2月初旬には吐血とともに肝予備能の悪化も認めたため、当院転院となった。【入院時現症】身長163cm、体重53kg、意識清明、羽ばたき振戦なし、眼球結膜黄染なし、腹部膨満著明、心窩部に肝触知、心窩部を中心に著明な圧痛と自発痛あり、腹部血管怒張なし、四肢浮腫なし【入院後経過】入院時より門脈圧亢進によると考えられる難治性腹水のために、ADLが著明に低下し、腹水穿刺排液を頻回に要した。上部消化管内視鏡検査では食道静脈瘤(LsF2CbRC0TE)を認め、前医での吐血はTEによるものと考えられた。腹部血管造影検査を行ったところ中肝静脈、右肝静脈は閉塞を来しており、肝部下大静脈から右房にかけて狭窄を認め、肝部下大静脈の狭窄前後で10mmHgの圧格差を認めた。以上よりBCSと診断した。症状と経過から急性型と考え、肝移植を検討したが、Child-Pugh 9点、MELDスコア13点で肝予備能は比較的保たれており、まずは、移植までのbridgingとして第38病日に経皮的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)を施行することとした。TIPS施行後、脳症の出現は認めず、肝予備能は改善し、腹水は速やかに消失した。現在、腹水および肝腫大は消失し、肝機能良好で外来通院中である。【考察】急速に進行したBCSによる難治性腹水に対しTIPSが奏功した。今後慎重な経過観察が必要であるが、現時点での肝移植を回避し得た貴重な1例と考え、文献的考察を加え報告する。
索引用語 門脈圧亢進症, TIPS