セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F2-3:

著明な低栄養により惹起された急性肝障害の一例

演者 大杉 直人(大阪大学医学部附属病院)
共同演者 有本 雄貴(大阪大学医学部附属病院), 宮崎 昌典(大阪大学医学部附属病院), 江崎 久男(大阪大学医学部附属病院), 重川 稔(大阪大学医学部附属病院), 薬師神 崇行(大阪大学医学部附属病院), 名和 誉敏(大阪大学医学部附属病院), 加藤 元彦(大阪大学医学部附属病院), 新崎 信一郎(大阪大学医学部附属病院), 西田 勉(大阪大学医学部附属病院), 阪森 亮太郎(大阪大学医学部附属病院), 巽 智秀(大阪大学医学部附属病院), 平松 直樹(大阪大学医学部附属病院), 辻井 正彦(大阪大学医学部附属病院), 竹原 徹郎(大阪大学医学部附属病院)
抄録 症例は30歳代女性。生来健康で偏食や飲酒歴なく体重は46kgで維持されていたが,2年前の秋頃より体重減少を認め,近医にて原因精査中であった.4ヶ月前より漢方薬内服を開始され,経過観察されていたが,食事摂取量の低下とともに体重減少は進行していた.軽度の肝機能障害を指摘され漢方薬内服は中止されていたが,その20日後に意識障害が出現したため,当院救急受診となった.
入院時身体所見は,GCS 4-4-5,脈拍 53bpm,血圧 97/68mmHg,体温 33.1℃,身長167cm,体重27kg(BMI 9.6kg/m2)であり,皮膚黄染と心尖部収縮期雑音を認めた.血液検査では,AST 4641 U/l,ALT 3889 U/l,T-Bil 5.1 mg/dl,PT 46%,Glu 10 mg/dlであり,著明なるいそう,肝機能異常および低血糖を認めた.血糖補正により意識障害は改善した.腹部CTでは胆管拡張や肝内SOL,脂肪肝は認めず,血液検査では各種ウイルス肝炎,自己免疫性肝炎は否定的であった.薬物性肝障害の可能性については,被疑薬である六君子湯のDLSTを行うも陰性であった.入院翌日より食事摂取を開始し,安静・補液による保存的加療にて肝機能は改善した.経過中に低リン血症,筋力低下を認めつつも,体重増加とともに栄養状態も改善した.食事摂取は良好で,第50病日に退院となった.この時点で体重は36kgまで回復していた.神経性食思不振症(AN)患者における肝障害は多数報告されるが,その多くは軽症である.本症例はANの診断基準を満たさないものの,低栄養により惹起された急性肝障害と考えられ,しかも肝障害は高度であり,非常に稀な症例と考えられた.
索引用語 急性肝炎, 低栄養