セッション情報 パネルディスカッション2 「根治治療不能進行消化器がんに対する治療選択」

タイトル P2-08:

TACE不応の進行肝細胞癌患者に対するソラフェニブ開始時期の検討

演者 有住 忠晃(近畿大学 医学部 消化器内科)
共同演者 上嶋 一臣(近畿大学 医学部 消化器内科), 工藤 正俊(近畿大学 医学部 消化器内科)
抄録 【目的】日本肝臓学会は肝外病変がある症例・脈管浸潤がある症例・TACE不応もしくは肝動注化学療法が不応の症例のうち肝機能が保たれていればソラフェニブの投与を推奨している。また、TACE不応を「TACE後の治療効果判定のCTにてリピオドールの沈着不良が2回以上続く」と提案している。今回、当院でソラフェニブ治療がなされた進行肝癌例において、ソラフェニブ治療直前のTACE回数が治療効果に与える影響を検討した。【方法】2009年5月から2013年1月までに当院でソラフェニブを投与された269例の進行肝癌患者うち、ソラフェニブ治療直前に3か月間隔でTACEを2回施行した群・3回施行した群・4回以上施行した群の間で、ソラフェニブの治療効果を比較した。2回の群は22例存在し、3回の群は8例、4回以上の群は26例存在した。治療効果判定は治療前と治療開始後の造影CTもしくは造影MRIで行い、mRECIST基準をもちいて判定した。【成績】最良効果判定は2回の群で完全寛解(CR) 0例、部分寛解(PR) 3例、不変(SD) 9例、進行(PD) 4例、評価不能(NE) 6例、奏効率(RR) 18.7%、病勢制御率(DCR) 75%、3回の群ではCR 1例、PR 0例、SD 2例、PD 3例、NE 2例、RR 16.6%、DCR 50%、4回の群ではCR 0例、PR 3例、SD 5例、PD 10例、NE 8例、RR 16.6%、DCR 44.4%であった。それぞれの生存期間(OS)の中央値は2回の群で752日(95%C.I. 643-860)、3回の群で567日(95%C.I. 0-1379)、4回以上の群で194日(95%C.I. 128-259)であり、2回と3回の間で有意差は見られなかったが(p=0.768)、4回以上の群は2回と3回の群とそれぞれの間で有意差を認めた(p<0.001)(p=0.03)。TACEの回数が3回以下と4回以上の2群間で比較したところ、OSの中央値は3回以下の群で752日(95%C.I. 534-969)であり2群間で有意差を認めた(p<0.001)。【結論】今回、治療効果判定では差は認められなかったが、ソラフェニブ投与直前のTACE回数が3回以下の場合、TACE回数が4回以上の群よりOSの延長を認めた。TACE不応の場合はTACEを継続するのではなく、TACE不応と判断した場合は早い段階でソラフェニブへ変更すべきと考える。
索引用語 ソラフェニブ, TACE不応