セッション情報 パネルディスカッション1 「肝・胆・膵腫瘍性病変早期発見に向けた取り組み」

タイトル P1-10:

当施設における早期膵癌発見のための取り組み

演者 蘆田  玲子(大阪府立成人病センター 検診部 消化器検診科)
共同演者 井岡 達也(大阪府立成人病センター 検診部 消化器検診科), 片山 和宏(大阪府立成人病センター 検診部 消化器検診科)
抄録 【背景】膵癌は依然として発見が困難であり、診断時に病期が進行していることが多く、予後が非常に悪い癌であることはいうまでもない。我々は膵癌を早期診断するにはまず、高リスク群の設定およびそれらの定期的な経過観察が必要と考え、1997年より膵精密超音波検査(膵エコー)による高リスク群の拾い上げ、およびそれらの定期検査を行なってきた。【対象と方法】対象は膵嚢胞(≧10mm)または膵管拡張(≧2.5mm)を伴う35歳以上75歳未満の患者で膵エコーにて2領域以上の描出不良域を伴わない症例。上記対象を3または6ヶ月毎に膵エコーおよび採血検査を行い、MRIもしくは造影CTを年に1回行う。経過観察中に変化や異常が見られた際はEUS/造影US/EUSを行い、必要であればEUS-FNA/ERCPを行う。【成績】2007年4月~2013年3月までの総登録者数は625名であった。このうち517名が2013年度に膵検診を受診した。膵検診の定期検査(年1回実施)として、造影CTが110件(内、造影107件)、MRIが369件実施された。精密検査としての造影CTが25例(4.8%)、MRIが17例(3.3%)、造影USが36例(7.0%)、EUSが60例(11.6%)、ERCP下膵液細胞診検査が25例(4.8%)であった。EUS-FNA、PET-CTはそれぞれ1例ずつ(0.2%)に実施された。その結果、通常型膵癌1例( PanIN3 ; Stage0)、乳頭部癌1例(Stage0)、IPMN由来浸潤癌2例(StageIA, IIb) の計4例の膵癌が発見された。これは経過観察例の0.77%(4/517例)に相当する。今年度膵検診で発見された膵癌全例に切除術が施行され(膵頭十二指腸切除術3例、膵体尾部切除術1例)、全例生存中である。4例の当院での検診登録から癌発見までの経過観察期間は平均66ヶ月(23-117ヶ月)で、確定診断の方法としてERP・膵液細胞診検査が3例、EUS-FNAが1例であった。今回癌が発見された4例中3例がIPMNを合併していた。【考察】当院における早期膵癌発見のための取り組みを紹介した。高リスク群に対する定期的な検査は早期発見のため重要であると考えられる。ただし、各々の検査の特徴をよく理解したうえで、見落としがなく苦痛の少ない検査方法の開発が必要である。
索引用語 膵癌, 早期診断