セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F3-6:

直腸神経内分泌腫瘍術後縫合不全治療中に増悪した潰瘍性大腸炎の一例

演者 吉田 豪太(大阪大学医学部附属病院 消化器内科)
共同演者 氣賀澤 斉史(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 新崎 信一郎(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 水島 恒和(大阪大学医学部附属病院 消化器外科), 加藤 元彦(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 名和 誉敏(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 重川 稔(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 江崎 久男(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 山田 拓哉(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 宮崎 昌典(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 薬師神 崇行(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 西田 勉(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 巽 智秀(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 平松 直樹(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 辻井 正彦(大阪大学医学部附属病院 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学医学部附属病院 消化器内科)
抄録 症例は40歳代男性。10年前より時折血便を認めていた。2011年7月他院にて直腸Rbの8mm大神経内分泌腫瘍(NET)を指摘され、内視鏡的切除術(EMR)を施行された。切除標本で深部断端遺残が疑われ追加治療目的で当院消化器外科に紹介となった。術前の下部消化管内視鏡検査では下行結腸に限局する非特異的炎症所見を認めたが、予定吻合部の直腸に炎症所見は認めず、同年10月超低位前方切除術および双孔式回腸瘻造設術が施行された。術後8日ごろより縫合不全による腹腔内膿瘍を来し、経皮的ドレーンを留置。以後ドレーン抜去に至らず直腸皮膚瘻の状態で外来経過観察となっていた。その後もドレーンより淡血性の排液が増加し、原因精査のため2012年10月下部消化管内視鏡検査を施行したところ下行結腸から直腸にかけて全周性に連続性の発赤、びらんを認め潰瘍性大腸炎を疑った。2012年11月に加療目的で再入院、当科共観となった。5-ASA製剤を回腸瘻より注入したが腹痛や排液がむしろ増悪したため中止、顆粒球除去療法を施行したが寛解導入に至らなかった。腹腔内膿瘍はコントロールできていることを確認の上、12月よりinfliximabを開始したところ、自覚症状および内視鏡所見の改善傾向を認め、瘻孔からの排液も著明に減少した。現在infliximabの継続投与にて寛解状態を維持している。本症例は術前より下行結腸に炎症所見を認めたことと、infliximabが奏功したことから、臨床的にはdiversion colitisよりもむしろrectal sparingを伴う潰瘍性大腸炎の増悪と考えられた。潰瘍性大腸炎のNET合併例の報告数は近年増加傾向にあり、潰瘍性大腸炎の長期経過例にはcolitic cancerのみならずNETの合併例も報告されている。本症例でも、病歴や超低位前方切除術施行時の病理像を再検討したところ直腸上皮に軽度炎症所見が認められたことから、慢性炎症が持続していたことがNET発症の背景にある可能性も考えられた。若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 神経内分泌腫瘍