セッション情報 パネルディスカッション2 「根治治療不能進行消化器がんに対する治療選択」

タイトル P2-09:

根治不能進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療と肝動注化学療法の適応と限界

演者 守屋 圭(奈良県立医科大学 第三内科)
共同演者 吉治 仁志(奈良県立医科大学 第三内科), 福井 博(奈良県立医科大学 第三内科)
抄録 【目的】最近の当科における肝細胞癌治療の成績をもとに,根治不能進行肝細胞(aHCC)におけるソラフェニブ治療と肝動注化学療法の治療成績を比較して,各治療法の適応と限界につき検討した.【対象と方法】ソラフェニブ適正使用指針作成後以降,主に当科で診断したaHCC患者77例を,ソラフェニブを投与したS群と肝動注化学療法を施行したH群に分類して,両群における治療効果(治療開始1ヶ月以降のModified RECIST Best responseで判定)と中央生存期間(MST)を比較検討した.【成績】S群(M25/F9,69歳)では肝動注化学療法先行例を12例に認めた.一方,H群(M33/F10,71歳)におけるソラフェニブ先行例は1例のみであった.また遠隔転移(M1)が多いS群では,後治療の実施が可能であった割合がH群よりも低率であった.治療効果では,S群でSDが過半数を占めたが,H群ではPRが比較的多くみられた.S群とH群のMST(日)は299/435とH群で有意に長かった.次に,aHCCの病期(II&III/IV)および肝予備能(Child A/B)別にS群とH群で比較検討した.その結果,両群のMSTにはいずれも有意差を認めなかったが,脈管浸潤(Vp)を有する症例のMST(日)はS群175対H群615とH群で良好であった.なお,S群においては遠隔転移の有無(M0/M1)でMSTに有意差はなかった.各治療法の中止理由は,S群では倦怠感などの身体的有害事象56%,PD44%の順であった.一方,H群では腫瘍増大PD82%が最多で,肝動脈閉塞10%が続いた.H群で肝予備能低下を来した症例は3分の1以下であり,低下例のほぼ全例がChildスコアでの1点減点であった.【結論】aHCCの治療において,ソラフェニブはVp(-)やM1症例での効果が期待される.一方,肝動注化学療法は進行例や予備能不良例,Vp症例でも十分な奏効が見込まれると共に肝予備能も損ねにくいことから積極的な実施が検討されるべきと考えられた.
索引用語 進行肝細胞癌, 肝動注化学療法