セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F5-1:

EUS-FNAで診断しえた黄色肉芽腫性胆嚢炎の一例

演者 原田 万裕子(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野)
共同演者 竹中 完(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 平田 祐一(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 那賀川 峻(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 小林 隆(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 塩見 英之(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 増田 充弘(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 有坂 好史(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 久津見 弘(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 東 健(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野), 原 重雄(神戸大学医学部付属病院 病理診断科), 伊藤 智雄(神戸大学医学部付属病院 病理診断科)
抄録 症例は70歳女性。平成24年11月頃より腹部膨満感を自覚し、近医での腹部CTにて胆嚢腫瘍、下腹部腫瘍および総胆管結石を指摘された。下腹部腫瘍に関しては、下大静脈を圧排し下腿浮腫をきたしており、婦人科受診の上卵巣腫瘍(奇形腫)が疑われ手術適応と判断された。総胆管結石は同年12月に採石施行され、卵巣腫瘍に対する治療ならびに胆嚢精査加療目的に当院を紹介受診された。腹部造影CTでは頚部に7mm大の結石があり、胆嚢壁は全周性の壁肥厚を認め、肝実質への浸潤様所見が認められた。MRIにて胆嚢壁内にRAS内の液体貯留である嚢胞状変化を示唆する所見は認められなかった。EUSでは胆嚢壁は全周性の肥厚を認め、内腔の狭小化があり、粘膜面は整であった。胆嚢と連続する3cm大の低エコー腫瘤を認め胆嚢壁からの膨張性発育や肝実質浸潤が疑われた。腫瘤の鑑別として胆嚢癌、黄色肉芽腫性胆嚢炎(以下XGC)、卵巣腫瘍転移病変が考えられ、病態に応じて治療方針が大きく異なるため、十分なインフォームドコンセントのもと、患者の同意を得て低エコー腫瘤より診断目的のEUS-FNAを施行した。病理検索ではいずれの検体も異型に乏しい腺上皮、リンパ球集簇が見られ、泡沫細胞、多核巨細胞の集簇が確認され胆嚢の炎症変化、特にXGCを見ているものとして矛盾しない像であった。検体中に胆嚢癌や卵巣奇形腫を疑う像はみられなかった。下腹部腫瘍は婦人科にて開腹手術され奇形腫と診断された。XGCと胆嚢癌は治療方針、予後と大きく異なる病態であるがしばしば鑑別に難渋する。本症例は婦人科腫瘍も併存しており、EUS-FNAによってXGCと診断がつき、胆嚢癌や婦人科腫瘍転移が除外されたことが治療方針検討に有益であった。胆嚢腫瘍に対するEUS-FNAはこれまでにも報告があるものの、癌であった場合の播種の問題など未だ検討を要するが、症例によっては適応があると考えられる。文献的考察も加えて報告する。
索引用語 黄色肉芽種性胆嚢炎, EUS-FNA