セッション情報 シンポジウム1 「ウイルス性肝炎治療の最前線」

タイトル S1-04:

固形癌におけるB型肝炎ウイルス再活性化の現状と課題

演者 野口 隆一(奈良県立医科大学 第3内科(消化器・内分泌代謝内科))
共同演者 吉治 仁志(奈良県立医科大学 第3内科(消化器・内分泌代謝内科)), 福井 博(奈良県立医科大学 第3内科(消化器・内分泌代謝内科))
抄録 【目的】2009年に「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」が作成され、固形癌においても化学療法時にはHBs抗原・HBs抗体・HBc抗体を測定し、陽性であれば肝臓専門医にコンサルトすることが推奨されている。しかし、非肝臓専門医における本ガイドラインの遵守状況などは未だ十分とは言えない。さらに、固形癌における化学療法では再活性化のリスクは低いとされることからガイドライン自体の見直しも検討されている。今回我々は、当院の固形癌化学療法時のB型肝炎ウイルス (HBV) 再活性化対策の現状と課題について検討した。【方法】ガイドライン作成後の2010年から2012年の間に当院にて癌登録された固形癌患者1757例を対象にHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体のいずれかが陽性であった107例中、化学療法を施行された33例についてHBVに対する対応と臨床経過について検討した。【成績】対象となった33例中、検査時にHBV-DNA陽性であった症例は22例であり、このうち17例に核酸アナログ製剤 (entecavir: 16例、lamivudine + adefovir: 1例)が投与されていた。5例はHBV-DNA陽性にも関わらず核酸アナログ製剤が投与されていなかったが、再活性化は認めなかった。HBV-DNAのモニタリングをされていなかった9例中HBVの再活性化は1例のみに見られた。この症例は、口腔癌に対するTS-1投与例であり、治療前HBs抗原は陰性でHBs抗体・HBc抗体検査は施行されていないde novo発症例であった。一方、ガイドライン遵守症例19例(58%)では全例再活性化は見られなかった。【考察】非肝臓専門医では固形癌において化学療法時にガイドラインが必ずしも遵守されていないことが明らかとなった。頻度は少ないものの、固形癌の化学療法においてもHBV再活性化が見られたことより、非肝臓専門医に対する更なる啓蒙とともに、固形癌症例の蓄積によるガイドラインの再検討が必要と考えられた。
索引用語 B型肝炎, 再活性化