セッション情報 シンポジウム2 「原因不明消化管出血の診断と治療の最前線」

タイトル S2-05:

カプセル内視鏡を用いた非ステロイド系消炎鎮痛剤起因性小腸粘膜傷害の病態と治療の検討

演者 倉本 貴典(大阪医科大学 第2内科)
共同演者 梅垣 英次(大阪医科大学 第2内科), 能田 貞治(大阪医科大学 第2内科), 樋口 和秀(大阪医科大学 第2内科)
抄録 【目的】非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)は胃のみならず小腸においても粘膜傷害を惹起し、原因不明の消化管出血(OGIB)の原因の一つである。酸が関与しないNSAIDs起因性小腸粘膜傷害の病態や予防法については未だ明らかでない点が多いが、原因薬剤の減量中止は困難な場合が多く、その予防や治療の確立が急務である。
【方法】施設におけるOGIBの現状を報告すると共に、基礎研究にてNSAIDs起因性小腸粘膜傷害に対して有効性が証明された消化性潰瘍治療薬を用いて、ボランティアを対象としたNSAIDs起因性小腸粘膜傷害に対する薬剤の臨床効果をカプセル内視鏡(CE)を用いて検討した。さらに、これら消化性潰瘍治療薬の小腸粘膜傷害に対する有効例について検討した。
【成績】
(1) 基礎研究でNSAIDs起因性小腸粘膜傷害に対して有効性の証明された薬剤のTeprenone、Irsogladine(IG)、Rebamipide、Lansoprazole はヒトにおいても粘膜傷害を抑制した。
(2) NSAIDsのDiclofenacを長期投与した試験では、6週目で小腸傷害の一時的な改善を認めたが、10週ではそれ以上の改善は認めなかった。さらに小腸傷害の生じた6週より10週目までIGを投与すると、10週での小腸傷害は有意に改善した。
(3) OGIB 150症例のうち、小腸疾患と診断できたものは65例(67.0%)、薬剤性小腸粘膜傷害は19例(12.7%)であり、そのうち13例は内視鏡的改善を確認できた。薬剤性小腸粘膜傷害において、3例は原因薬剤の中止が可能であったが、残り10症例についてMisoprostolの投与(2例)、胃粘膜防御因子増強薬の単剤投与(6例)、複数の消化性潰瘍治療薬の投与(2例)にて改善した。
【結論】NSAIDs起因性消化管粘膜傷害に対して、食道から小腸までの傷害を、一剤で抑制できる可能性のある消化性潰瘍治療薬の存在が明らかとなった。
索引用語 小腸粘膜障害, 原因不明消化管出血