セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y5-1:

Klebsiella pneumoniae肝膿瘍から敗血症性肺塞栓症と内因性眼内炎を合併した1例

演者 村上 坤太郎(西神戸医療センター 消化器内科)
共同演者 荒尾 真道(西神戸医療センター 消化器内科), 小林 英里(西神戸医療センター 消化器内科), 沖重 有香(西神戸医療センター 消化器内科), 吉田 裕幸(西神戸医療センター 消化器内科), 荒木 理(西神戸医療センター 消化器内科), 津田 朋広(西神戸医療センター 消化器内科), 佐々木 綾香(西神戸医療センター 消化器内科), 安達 神奈(西神戸医療センター 消化器内科), 島田 友香里(西神戸医療センター 消化器内科), 林 幹人(西神戸医療センター 消化器内科), 井谷 智尚(西神戸医療センター 消化器内科), 三村 純(西神戸医療センター 消化器内科)
抄録 【はじめに】Klebsiella pneumoniaeによる原発性肝膿瘍とは,肝膿瘍を続発する消化器疾患を認めず,分離菌が単独の肝膿瘍と定義される.近年台湾を中心とした東南アジアで報告されており,血行性感染を合併する例が多く重症化することも少なくない.今回我々はK.pneumoniae肝膿瘍から多臓器播種を呈した1例を経験したので報告する.【症例】60歳台女性.入院13日前より発熱,全身の関節痛が出現し,当院一般内科外来を受診した.血液検査にて炎症反応の上昇および肝胆道系酵素の上昇が認められ,腹部超音波検査では肝S5に径17mm程で境界不明瞭なcystic patternを呈する結節および肝S7に径40mm程で境界不明瞭なmixed patternを呈する結節が認められた.糖尿病の治療歴は認めず,免疫能も正常であった.血圧低下がみられており,肝膿瘍,敗血症性ショックの診断にて緊急入院となった.入院後よりCTRX 2g/日の点滴静注を開始し,第2病日,肝S7の膿瘍に対して経皮的経肝膿瘍ドレナージを施行した.入院時の血液培養および膿瘍の穿刺液から莢膜多量産生株であるK.pneumoniaeが検出された.第6病日より,SBT/CPZ 3g/日へ変更.入院時より咳嗽がみられ,胸腹部造影CTを施行すると,両側肺野に多発する大小の結節および空洞性病変を認め,敗血症性肺塞栓症と考えられた.第13病日,頭痛と右眼痛が出現.網膜電位図で右眼の反応はみられず右内因性眼内炎と診断され,緊急で硝子体手術が施行された.硝子体液からK.pneumoniaeが培養された.右眼の視力は0.1と失明を避けることができた(元来1.2).抗生剤の肺野への組織移行性を考慮し,第14病日よりCAZ 6g/日の点滴静注へと変更.第27病日,胸腹部造影CTにて肺野病変および肝膿瘍は縮小傾向がみられ,ドレナージチューブを抜去した.LVFXを2ヶ月間内服する方針とし,第30病日に退院とした.【考察】K.pneumoniae肝膿瘍は全身性の病態の一部である可能性があり,診断と治療に際して領域横断的な知識が要求される.早急に感染源を特定し,適切な治療を開始することが予後改善につながると考えられた.
索引用語 Klebsiella肝膿瘍, 敗血症性肺塞栓症