抄録 |
【背景】総胆管結石症の治療は本邦ではESTなどの径内視鏡的治療が主流であるが,最近では長期胆道合併症が問題視されている.当院では内科外科合意のもと総胆管径6mm以上はLCBDE,6mm未満はEST+腹腔鏡下胆嚢摘出術(EST+LC)としており,今回我々は当院での総胆管結石症の各治療成績につき検討した.【方法】2004年4月から2012年3月までに総胆管結石症と診断された開腹術を除く118例をLCBDEとEST+LCに分類し,手術時間,術後在院日数(EST+LCはEST後よりLC後退院まで),処置後合併症,結石遺残,再発率につき検討した.当院のLCBDEは総胆管切開法で採石し胆管は体内結紮縫合,術後径胆嚢管的に留置したCtube造影にて遺残結石の有無を確認している.【結果】LCBDE88例/EST+LC30例.手術時間(分):LCBDE208±62/EST+LC130±60.LCBDEの平均胆管結石採石時間は65分で,個数によらず陥頓例や乳頭部側に結石が存在する症例は採石時間の延長がみられた.在院日数:LCBDE14±9,EST+LC19±12.6.術後合併症はLCBDEは創感染が主で,処置が必要な術後胆管狭窄は認められなかった.EST+LCではEST後の乳頭部出血と膵炎を6例認め,術前ESTに伴う出血などにより外科的処置を必要とした症例は3例あった.結石遺残再発率はLCBDE:4.54%,EST+LC:17.4%だった. また,LCBDEにおける開腹移行例は21例で,癒着による視野不良が10例と多く,採石不能による開腹移行は6例だった.また採石時の総胆管損傷による開腹移行を1例認めた.【結論】LCBDEの在院日数や結石遺残,再発率はEST+LCより低く,懸念された胆管狭窄も認めなかった.乳頭機能温存やESTに伴う重篤な合併症を考慮するとLCBDEはEST+LCと比して遜色のない治療法で,対費用効果の面でもLCBDEは再評価されるべき術式であると考える.また手術手技の煩雑さは術式の定型化にて解決しうる問題でありLC施行可能な施設であれば導入可能な手技と考えるが,結石の存在部位によっては採石に難渋することから,結石径や存在部位に応じて治療方針を検討することも必要と考える. |