セッション情報 一般演題

タイトル 32:

放射線併用動注化学療法が奏効した腫瘍塞栓にて門脈閉塞を伴う肝細胞癌の一例

演者 大濱 日出子(大阪医科大学 消化器内科)
共同演者 横濱 桂介(大阪医科大学 消化器内科), 筋師 徹也(大阪医科大学 消化器内科), 土本 雄亮(大阪医科大学 消化器内科), 朝井 章(大阪医科大学 消化器内科), 福西 新弥(大阪医科大学 消化器内科), 津田 泰宏(大阪医科大学 消化器内科), 樋口 和秀(大阪医科大学 消化器内科)
抄録 症例は60才代、男性。C型慢性肝炎にて近医でフォローされていた。平成23年11月頃に腫瘍マーカーが高値にて精査、腹部エコー検査で肝腫瘍を認め紹介。腹部造影CTにて肝右葉に境界不明瞭で動脈早期層で濃染し、平衡相でwash outするびまん性の肝腫瘍を認め、門脈左枝から本幹が腫瘍にて閉塞しており、肝細胞癌、Stage IVaと診断された。血液検査所見ではWBC 4290/ml, RBC 434万/ml, Hb 14.4g/dl, PLT 8.1万/ml, ALB 3.8g/dl, T-Bil 1.8mg/dl, AST 82U/l, ALT 116U/l, BUN 11mg/dl, Cr 0.84mg/dl, PT 103%, ICG15 21%, AFP 13ng/ml, AFP-L3 7.2%, PIVKA2 13300mAU/mlであり, 腹部CTにて腹水を認めChild-Pugh A, LD-Bであった。肝切除は適応外と判断され、アイエーコール (50mg/mm3)による動注化学療法及び門脈腫瘍栓に対して計50Gyの放射線照射を施行した。放射線治療中に腹水の増加と肝予備能の低下を認めたが、照射終了後次第に腹水は改善し、肝機能も回復した。PIVKA2 780mAU/mlと改善傾向を認めたため効果ありと判断し、以後1~2ヶ月毎にアイエーコールによる動注化学療法を繰り返し施行した。計5回動注化学療法を施行した時点でPIVKA2は80mAU/mlと著明に改善し、腹部CT上門脈の開存は得られなかったが、腫瘍栓は著明に縮小、血栓化を認め、肝右葉内の腫瘍もS8に10mm大の残存結節の残す以外は消失していた。平成24年12月に残存腫瘍に対して経皮的ラジオ波焼灼術を施行、PIVKA2は正常化し現在も肝内に腫瘍の再発は認めていない。腫瘍塞栓にて門脈本幹が閉塞した肝細胞癌に関しては急速に肝不全を来す事が多く予後不良であり、エビデンスのある治療法は確立されていない。肝細胞癌は放射線感受性があるため、腫瘍塞栓部局所に照射する事で放射線による肝予備能の低下を最小限にするとともに動注化学療法を繰り返す方法はこのような肝細胞患者に対して有効な治療法となる可能性が示唆された。
索引用語 門脈閉塞を伴う肝細胞癌, 放射線治療