セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y5-4:

アルコール性肝硬変の経過中に被嚢胞性腹膜硬化症による癒着性イレウスを来した1例

演者 檀 直樹(兵庫県立西宮病院内科)
共同演者 松本 仁(兵庫県立西宮病院内科), 安田 華世(兵庫県立西宮病院内科), 森本 美希(兵庫県立西宮病院内科), 増田 江利子(兵庫県立西宮病院内科), 柳川 和範(兵庫県立西宮病院内科), 瀧内 大輔(兵庫県立西宮病院外科), 柏崎 正樹(兵庫県立西宮病院外科), 乾 由明(兵庫県立西宮病院内科), 河田 純男(兵庫県立西宮病院内科)
抄録 被嚢胞性腹膜硬化症 (encapsulating peritoneal sclerosis:以下EPS) は、長期の腹膜透析患者に合併する最も重篤な合併症の1つであり、癒着性イレウスを引き起こし、開腹手術を要することが多い病態である。今回我々は、アルコール性肝硬変の経過中に、腹膜透析の既往なく、EPSによる癒着性イレウスを引き起こした1症例を経験したので報告する。【症例】66歳男性【既往歴】2008~09年にかけて、臍ヘルニアで2回の手術(他医)【現病歴】 2008年より当科にてアルコール性非代償性肝硬変、2型糖尿病、糖尿病性腎症にて通院加療を行っていた。2011年9月より2012年9月までにサブイレウスにて当科に4回入院した。何れの入院時も小腸の走行がループ様で、その位置に一致した腹痛を認めていたが、保存的治療にて軽快していた。2013年2月21日の16時ごろより腹痛、下痢を来たし当院に救急搬送され、精査加療目的にて入院となった。腹部CTにて前回入院時と同様に小腸ループの拡張と腸液貯留を認め、癒着性イレウスと診断した。イレウス管を挿入するも症状改善されず、当院外科に紹介し、同日緊急手術を行った。開腹にて、全小腸が繭状に癒着しており、EPSの診断のもとに全小腸癒着剥離術を行った。イレウス症状は改善し、食事摂取可能となり術後2週間にて退院し外来へ移行した。【考察】EPSは長期腹膜透析患者に合併することが多い。まれにその他の様々な原因により発症することが報告されているが、病因として不明な部分も多い。本邦では特発性細菌性腹膜炎 (spontaneous bacterial peritonitis:以下SBP) 合併の肝硬変症例でEPSによるイレウスをきたした症例報告が散見される。また、頻回の手術によりEPSをきたした報告もある。本症例はSBP合併の肝硬変症例であり、頻回の開腹手術歴があることからEPS発症のリスクが高かったと考えられる。SBP合併の肝硬変症例において、サブイレウスを繰り返す場合、EPSを念頭に置く必要があると考える。
索引用語 被嚢胞性腹膜硬化症, アルコール性肝硬変