セッション情報 シンポジウム2 「原因不明消化管出血の診断と治療の最前線」

タイトル S2-03:

原因不明の消化管出血におけるカプセル内視鏡の役割

演者 柄川 悟志(関西労災病院 消化器内科)
共同演者 中村 剛之(関西労災病院 消化器内科), 萩原 秀紀(関西労災病院 消化器内科)
抄録 【背景・目的】上部および下部消化管内視鏡により出血源を特定できない消化管出血に対して、カプセル内視鏡は有用な検査法であるが、バルーン小腸内視鏡と異なり、病変の詳細な観察、生検を行えないという制限があり、その役割は定まっていない。今回我々は原因不明の消化管出血におけるカプセル内視鏡の至適な検査のタイミング、検査施行対象を明らかにすることを目的とし、自験例の検討を行った。【対象・方法】2008年12月より2013年5月までの期間、原因不明の消化管出血に対してカプセル内視鏡を行った90例(検査回数98回)を対象とし、肝硬変、腎不全の有無、抗血小板剤・抗凝固剤・NSAIDs内服の有無、大腸憩室の有無、有症状例については症状出現から検査施行までの日数について解析した。カプセル内視鏡後にダブルバルーン小腸内視鏡を行った症例については、カプセル内視鏡所見が最終診断に有用であったか否かについて評価した。【結果】肝硬変合併例は90例中10例(11%)、腎不全合併例は17例(19%)、抗血小板剤内服22例(24%)、抗凝固剤内服9例(10%)、NSAIDs内服8例(8.9%)であった。また90例中22例(24%)に大腸憩室を認め、カプセル内視鏡で異常の無い21例中6例(29%)は大腸憩室を有した。ダブルバルーン小腸内視鏡施行例40例のうちカプセル内視鏡を先行して行った件数は23件であった。ダブルバルーン小腸内視鏡に先行してカプセル内視鏡を行った23件のうちカプセル内視鏡の所見が診断に有用であったと判断した件数は11件であった。症状出現時からカプセル内視鏡施行までの日数を、カプセル内視鏡の所見が有用であった群と有用性が不明であった群を比較すると、有用であった群は平均83.1日、不明であった群は23.5日であった。【結論】原因不明の消化管出血の中には一定数の大腸憩室出血が含まれる可能性がある。カプセル内視鏡は小腸出血の診断に有用な検査であるが、症状出現から検査までの期間と診断への貢献の有無に相関を認めなかった。
索引用語 カプセル内視鏡, 小腸出血