セッション情報 パネルディスカッション1 「肝・胆・膵腫瘍性病変早期発見に向けた取り組み」

タイトル P1-06:

当院におけるGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相で低信号を示す乏血性肝結節の臨床経過

演者 江崎 久男(大阪大学 消化器内科)
共同演者 薬師神 崇行(大阪大学 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学 消化器内科)
抄録 【背景】high risk患者の囲い込みと画像診断技術の向上により早期肝細胞癌の発見が可能となった。しかし、Gd-EOB-DTPA造影MRI(EOB-MRI)肝細胞相で低信号を示す乏血性結節の臨床的な取り扱いについてはlead time biasの問題もあり一定の見解が得られていない。【方法】2008年4月から2013年3月までに当院で施行されたEOB-MRI肝細胞相で低信号を示した乏血性結節、68症例141病変を対象とした。EOB-MRI肝細胞相での低信号を最初に確認した日を観察開始日とし、造影CT、MRI動脈相またはCTHA(CT during hepatic arteriography)での造影効果(多血化)を認めた日、腫瘍生検を施行しHCCと診断された日、HCC診断が得られなかった病変に関しては最終画像診断日を観察終了日としてその臨床経過を検討した。【結果】全病変の平均観察期間は23か月で、56病変が多血化もしくは組織学的なHCC診断のため観察を終了した。全病変の観察開始時の平均径は10.2mmで、悪性化した病変、悪性化しなかった病変の観察終了時の平均径はそれぞれ15.4mm、10.7mmで両者の間に有意差がみられた(P<0.01)。生検を施行した18病変のうち、17病変がHCCと診断され、その平均径は17.1mmであった。6か月以上経過観察し得た、観察開始時径10mm未満、10mm以上の病変のKaplan-Meier法による1年累積多血化率は13.2%、11.7%で3年累積多血化率は25.3%、54.1%であった。Cox比例ハザードモデルを用いた単変量解析では男性、高齢、HCV感染、観察開始時の病変径10mm以上、AST高値、ALT高値、T-Bil高値、PT(%)低値が多血化の有意な因子として選択された。【結論】EOB-MRI肝細胞相で低信号を示す乏血性結節を認めた場合、今回の検討からは男性、高齢者、HCV感染症例、病変径の大きい症例、肝炎の活動性が持続している症例、肝予備能低下症例はより厳重な経過観察が必要と思われた。
索引用語 肝細胞癌, EOB-MRI