セッション情報 シンポジウム2 「原因不明消化管出血の診断と治療の最前線」

タイトル S2-08:

原因不明消化管出血に対してダブルバルーン小腸内視鏡を施行した症例の検討~Osaka Gut Forumにおける多施設臨床研究~

演者 前川 聡(大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学)
共同演者 飯島 英樹(大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学)
抄録 【背景】原因不明消化管出血(OGIB)に対する内視鏡的アプローチにおいて出血の状態による病変の違いは十分検討されていない。【目的】OGIB症例を顕在性OGIB(顕在例)と潜在性OGIB(潜在例)とに分類し、また顕在例に関してはDBE施行時の出血兆候の有無について区別し、病変の特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】大阪大学関連8施設(Osaka Gut Forum)においてDBEが施行されたOGIB症例323症例の多施設後ろ向き検討。吐下血、血便などの肉眼的出血が確認された症例を顕在例、貧血や便潜血検査陽性(化学法、免疫法)症例を潜在例とした。顕在例に関してはDBE施行時の出血兆候もしくは血性残渣の有無によってactive bleeding症例(active例)もしくはinactive bleeding症例(inactive例)に分類した。【成績】顕在例は277症例で、平均年齢は66.5歳(15-91歳)、男性162例、女性115例。有所見率は55%(152/277例)で、びらん・潰瘍性病変が35%(53/152例)、血管性病変が23%(35/152例)、腫瘍性病変が12%(18/152例)であった。潜在例は46症例で、平均年齢は66.2歳(17-84歳)、男性29例、女性17例。有所見率は46%(21/46例)で、びらん・潰瘍性病変が38%(8/21例)、血管性病変は19%(4/21例)、腫瘍性病変は19%(4/21例)であった。顕在例、潜在例 の有所見率は同程度であり、潰瘍性病変が最も高頻度であった。顕在例277症例においてactive例は49例、inactive例は228例であり、DBE施行までの時間が短い症例においてactive例の頻度が高い傾向であった。潰瘍性病変の頻度はactive例で26%(11/42例)、inactive例で38%(42/110例)であったのに対して、血管性病変はactive例で33%(14/42例)、inactive例で19%(21/110例)とactive例においては血管性病変が最も高頻度であった。【結論】顕在例と潜在例においては同程度の小腸病変が認められ、いずれにおいてもDBEは有用であると考えられた。Active bleeding例では血管性病変に注意する必要があると考えられた。
索引用語 原因不明消化管出血, ダブルバルーン小腸内視鏡