セッション情報 一般演題

タイトル 01:

診断に苦慮した非定型の家族性地中海熱の一例

演者 依藤 直紀(大阪医科大学)
共同演者 柿本 一城(大阪医科大学), 井上 拓也(大阪医科大学), 坂中 太輔(大阪医科大学), 藤原 薫(大阪医科大学), 井口 宗威(大阪医科大学), 楢林 賢(大阪医科大学), 岡田 俊彦(大阪医科大学), 能田 貞治(大阪医科大学), 石田 久美(大阪医科大学), 川上 研(大阪医科大学), 倉本 貴典(大阪医科大学), 阿部 洋介(大阪医科大学), 竹内 利寿(大阪医科大学), 梅垣 英次(大阪医科大学), 樋口 和秀(大阪医科大学)
抄録 60歳代女性〔現病歴〕2007年7月に37度台の発熱、強い腹痛およびCRP高値を認め他院に入院し、上部・下部消化管内視鏡、腹部CTを施行されたが明らかな異常は指摘されなかった。感染性腸炎の診断のもと保存的加療が行われ、短期間で症状は改善した。しかしその後も同様の症状を周期的に認めるため入退院を繰り返し、2008年5月にも同様の症状が出現したため、精査加療目的にて当科紹介入院となった。〔経過〕入院後、上部・下部内視鏡では明らかな病変は指摘できなかったが、腹部CTにて上部小腸の壁肥厚、腸間膜リンパ節の腫大を認めた。FDG-PETでは同部に明らかな集積を認めず、悪性疾患は否定的であり、絶食および点滴加療(補液、抗生剤)を行ったところ症状は速やかに改善し退院となった。しかし同年8月下旬に再び症状が出現し、カプセル内視鏡やダブルバルーン小腸内視鏡にて小腸の精査を行うも原因は判然としなかった。その後も周期的に発熱、腹痛を認めるものの、入院、絶食等による保存的加療で症状は軽快していた。各種検査にても有意な所見に乏しく診断に苦慮していたが、経過より家族性地中海熱を疑い、2011年2月より診断的治療としてコルヒチン1mgを投与したところ、その後は症状発現する頻度は激減した。MEFV遺伝子の解析では変異を認めず、非定型の家族性地中海熱と診断し、現在もコルヒチン内服を継続しているが、経過良好である。〔考察〕家族性地中海熱(FMF)は反復する38℃以上の発熱と腹膜炎、胸膜炎、関節炎などの漿膜炎症状を主徴とする遺伝性自己炎症性疾患である。本症例は38℃以下の発熱であり典型例ではないが、発熱、腹痛発作を繰り返すこと、コルヒチンが著効したことから、非定型の家族性地中海熱(FMF variant)と診断した。家族性地中海熱は稀な疾患で診断に苦慮することが多く、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 家族性地中海熱, 小腸炎