セッション情報 シンポジウム「メタボリックシンドロームと肝胆膵疾患」

タイトル S-11:

耐糖能障害と脂肪肝が肝発癌に与える影響

演者 青木 智子(兵庫医科大学 肝胆膵内科DELIMITER兵庫医科大学 超音波センター)
共同演者 西口 修平(兵庫医科大学 超音波センター), 飯島 尋子(兵庫医科大学 肝胆膵内科DELIMITER兵庫医科大学 超音波センター)
抄録 【目的】糖尿病の第一死因は癌死で、肝癌が最多である。微少な耐糖能異常が胃癌に寄与することは既に報告されており、耐糖能異常・脂肪肝(以下FL)が肝線維化や発癌に与える影響を検討した。【方法】2008/10~当院でFL及び非侵襲的線維化診断法(VTQ)を評価した4234例(FLなし/軽度/中等度/高度3020/700/393/121例)を対象として以下の検討を行った。(1)FL症例での肝障害の有無とVTQを比較検討した。(2)4234例中4か月以内に肝生検を行った1061例で、FLと相関する因子を検討した。(3)発癌歴のない慢性肝疾患905例を追跡し、経過中発癌した症例の特徴を多変量解析で検討した。【結果】(1)FL1214例中300例で肝障害を認め、99例が病理学的にNASHと診断された。肝障害のない群では、FL軽度/中等度/高度の順にVTQ 1.37/1.25/1.43、肝障害のある群ではVTQ1.58/1.55/1.31(m/s)と肝障害があると肝臓は硬くなる傾向にあった。(2)FLの程度と相関する因子(相関係数R)を検討すると、BMI(0.418)、BS(0.149)、女性(0.149)、F因子(-0.069)、A因子(-0.143)、ALT(0.085)、発癌(N.S.)であり、FLは肥満・耐糖能異常と関連する一方で、線維化・発癌とは関連しなかった(p<0.05)。(3)肝発癌に至った症例の特徴として、多変量解析では男性、VTQ高値、高齢、BS高値、Plt低値が挙げられたが、FLは関連を認めなかった(p<0.001)。VTQ<1.47m/sかつBS≦95mg/dlの場合、HCC発症率は0.53%(2/375)、VTQ≧1.47m/sかつBS>95mg/dlの場合、HCC発症率は25%(28/112)であり、後者は46.9倍発癌リスクが高かった。【考察】NASHではburnoutしている等の理由から超音波で全例がFLと診断できる訳ではないが、今回の検討でFLが肝線維化・発癌に関与する結果は示せなかった。一方で微少な耐糖能異常が発癌に強く影響していることが示された。【結語】FLは肝線維化・発癌に直接影響しないが、耐糖能異常は肝発癌に一定の影響を与える可能性が示された。
索引用語 耐糖能異常, 肝細胞癌